クレーンの災害事例
CR04051
事  例

荷を載せた台車をエレベータで昇降中,荷が引っ掛かり作業者が圧死する

[原因と対策]
業  種 貨物運送事業 機  種 エレベーター
被  災 死亡 1名 現  象 その他の狭圧
 
あらまし

本災害は,段ボール箱を2台の台車に載せた後,これらの台車を荷物用油圧エレベーターで1階から2階に運ぶ途中で段ボールが昇降路に引っ掛かり,荷が強く押されて台車のハンドル部分が同乗していた作業者の首を強圧して死亡したものである.
災害が発生した事業場では,物流センター内において商品の入荷,荷分け及び配送等の業務を下請けしていた.作業者Aは入荷業務が担当であったため,災害発生当日6時50分頃に出勤して物流センター1階で入荷等の作業に当たっていた.午前8時35分頃,Aは荷物用油圧エレベーターの2階に停止している搬器上において,背中を昇降路にもたれかけ,立った姿勢で動かなくなっているところを発見された.このとき搬器には段ボール箱を積んだ台車2台が載せられており,2階出入り口から見て左側の台車のハンドルがAの顎の下に当たっていた.Aは脈がない状態であったので,救急隊員の指示を受けながら蘇生措置を行い病院に収容したが,死亡が確認された.なお,Aに当たっていた台車に積んであった荷は前面部分が荷崩れを起こし,一部の荷は壊れていた.また,搬器は2階部分の所定の停止位置より約8センチ下がったところで停止していた.事故の発生を直接目撃したものはいなかったが,台車や荷の状況から,Aは段ボール箱を積んだ台車2台を搬器に載せて2階に運ぼうとして,1階に取り付けられた操作ボタンを押し,搬器の上昇と同時に台車のハンドル付近に乗り込んだ.搬器が上昇中に台車が移動し,2階床先に張り出した蛇腹式扉のレールに台車に積んだ荷物が引っ掛かり,台車の前方部分が押し下げられ,ハンドル部分が持ち上がってAの顎の下付近に当たった.搬器いっぱいに荷を載せていたためAは避難できず,被災したと推定される.
この昇降装置はガイドレールを有する昇降路内に油圧シリンダー,パンタグラフ,テーブルを組み合わせたもので,積載荷重が950kgの荷物用の油圧式エレベーターである.搬器の大きさは出入り口幅 1.9m,側面幅2.0mの床の上に高さ1.2mの柵を設けたもので,天井は取り付けられていなかった.また,搬器の1階及び2階出入り口とも扉や仕切は設けられていなかった.搬器の揚程は3.5mであって,操作スイッチは1階と2階の出入り口に設けられていて搬器内にはなく,また搬器上で動力を遮断する装置も設置されておらず,エレベーター構造規格に合致していなかった.なお,1,2階に設置された操作盤付近には「乗ってはいけません」と赤字の注意書きや「リフト使用上の注意」のステッカーが貼られていたが,守られていなかった.また,定期自主検査が実施されていなかった. なお,事故発生時に搬器に乗っていた荷物,台車及び作業者の質量の総計は約300kgであり,エレベーターの積載荷重を下回っていた.

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