クレーンの災害事例
CR04081
事  例

天井クレーンの操作ケーブルが走行中にH鋼に引っ掛かり、H鋼が落下して運転者を直撃する

[原因と対策]
業  種 金属製品製造業 機  種 天井クレーン
被  災 死亡1名 現  象 床上の物体の転倒による狭圧
 
あらまし  本災害は鉄骨加工を行っている工場において,床上運転式天井クレーンを空荷で移動している際に,通路脇に張り出した状態で仮置きされていたH 鋼に押しボタンスイッチのケーブルが引っ掛かり,H 鋼が落下してクレーン運転者がその下敷きになったものである. 災害が発生した事業場は鉄骨建築に使用する鉄骨柱や鉄骨梁等の金属製品を加工していて,工場は第1,第2,第3,第4の4つの工場が隣接して建てられており,各工場では自社の作業者と数社の下請け作業者が協力して作業を行なっていた.このうち第1工場では鉄板へのショット掛けや穴開け作業を,第2工場では切断,面取り,小梁の溶接を,第3及び第4工場では仕口,柱,梁等の組み立てを主に行っていた.
 災害発生当日,製造課長は被災者A が所属する第2工場の一次加工班に対して,5本の小梁にリブを仮溶接及び本溶接を急いで行うように指示した. これを受けて一次加工班の班長B は,B が仮溶接を終えたらA に本溶接をやるように命じた.そこでA は,B が仮溶接作業を行っていた第2工場の南側にH 鋼を3本並べて溶接用の作業台を準備した.午後5時過ぎにA はB が仮溶接した小梁を作業台に運ぶために,つり上げ荷重5.1t の床上運転式天井クレーンの押しボタンスイッチを操作して, 空荷の状態でクレーンを北に走行させながら小梁の方に向かって通路を移動した.このとき第3工場に仮置きされていた長さ12.5m,質量約1.5t のH 鋼柱が第2工場に約2.3m せり出していたため,押しボタンスイッチのケーブルがこのH 鋼柱に引っ掛かり,高さ約1.5m の架台からH 鋼柱が落下して押しボタンスイッチを操作していたA がH 鋼柱の下敷きとなった.この事故によりケーブルが押しボタンスイッチボックスからすっぽり抜け,さらにケーブル自体も切断した.
 使用していたクレーンは床上運転式クレーンに属するもので,その扱いにはクレーン運転士免許を受けた者または床上運転式クレーン限定免許を受けた者が必要であったが,A はつり上げ荷重が5t 未満のクレーンしか扱うことが出来ない特別教育を修了しているだけで,必要な資格を有していなかった. しかし,玉掛け技能講習は修了していた.

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