クレーンの災害事例
CR04111
事  例

天井クレーンが突風で走行レール上を逸走してランウェイから落下する

[原因と対策]
業  種 金属製品製造業 機  種 天井クレーン
被  災 死亡 1名 軽傷 2名 現  象 機体の落下
 
あらまし  本災害は鋼管等の金属製品を製造している工場において,屋外に設置されたランウェイ上を走行する3台のホイスト式天井クレーン(いずれもつり上げ荷重30t,スパン40m)が,突風にあおられて走行レール上を約240m 逸走して緩衝装置に激突して緩衝装置を壊し,ランウェイからクレーンが次々に落下して運転者1名が死亡し,2名が軽傷を負ったものである.
 災害が発生した工場では鋼管等の金属製品を運ぶために,構内の南北にランウェイが4ヤード平行に設置されており,これらのランウェイ上に1号機から5号機までの5台のクレーンが配置されていた. 災害は2号機,3号機及び4号機の3台のクレーンで発生した.
 災害発生当日は8時から製品係,クレーン運転者, 玉掛け者で当日の作業内容の打ち合わせを行った後, クレーン運転者A が2号機に,B が3号機,C が4号機のクレーンに搭乗して製品の運搬作業に取りかかった.午後1時半頃からぱらぱら雨が降り始め, 2時半頃には雨が強くなってきたが,風はそれ程強くなかった.午後3時頃,同じ走行レール上に並列に配置されていた3号機と4号機が雨で配電盤のブレーカーが落ちて停止した.ブレーカーを投入してから約10分後,隣のランウェイ上の2号機が風に流されて,北側の緩衝装置に衝突して停止したのを, 3号機に搭乗していたB が目撃した.間もなく2 号機に搭乗していたA から,「衝突して止まったよ」との無線連絡があった.その直後の3時20分頃, 風速計が15m/sを示したため,係長から3人のクレーン運転士に作業を中止するよう無線で指示があった.このため,4号機の運転者C はクレーンを北側に移動して,つり荷を下ろした.直後に電源が切れると共に雨風が非常に強くなり,クレーンが揺れはじめて,ブレーキのかかった状態で突然南側に向かって逸走した.このとき,南から吹き付けていた風雨が急に西側からの風向きに変わり,3号機に搭乗していたB は異常なほど風が強くなったと感じた.同時に,先程隣のランウェイ上を北側に逸走していた2号機が,逆に南側に向かって逸走しているのをB は目撃した.その後,B の運転する3号機は移動・停止を繰り返していたが,やがて一気に南側に逸走した.このときB は,いつも同一ランウェイ上の南側を走行している4号機が,視界から消えていることに気が付いた.
 4号機はB が気付く直前に走行レール上を約100 m 逸走し,南側の緩衝装置に激突して高さ11.2m のランウェイから反転した状態で落下した.激突・落下の際に,運転室がガーダから外れ,搭乗していたC は負傷した.この激突によって,ランウェイを共有している2号機の緩衝装置も大きく変形した. なお,この頃(3時半項)の風速は,風速計を60 m/sに切り換えても振り切れてしまい,計測出来ない状態となっていた.
 4号機の落下直後,2号機も走行レール上を南側に240m 逸走して緩衝装置に激突し,ランウェイから落下した.このとき運転室がガーダの下敷きになり,運転者A が死亡した.2号機の落下に続いて3号機も約220m 逸走したが,緩衝装置が大きく変形していたため緩衝装置に衝突することなく,ランウェイからすでに落下していた4号機の上に折り重
なるように落下した.運転室はかなり損傷したが, 幸い運転者のB は軽傷に止まった.
 
 
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