クレーンの災害事例
CR04121
事  例

天井クレーンで鉱滓はつり機をつり上げ中、ホイストがレールから外れて落下し作業者を直撃する

[原因と対策]
業  種 鉄鋼業 機  種 天井クレーン
被  災 死亡 1名 休業 2名 現  象 機体の落下
 
あらまし  本災害は製鋼工場において溶銑鍋に付着した鉱滓をはつり取る鉱滓はつり機を修理するために,はつり機のブームに玉掛けしてつり上げ荷重4.1t の床上操作式天井クレーンで巻き上げ操作を行いブームを起こそうとしたところ,ホイストが横行レールから外れて落下し,作業者1名が死亡し,2名が負傷したものである.
災害が発生した工場では溶銑鍋に鉱滓が付着するため,鉱滓はつり機を用いて定期的に鉱滓を除去していた.鉱滓はつり機は油圧で鉱滓をはつる装置であって,形状はコンクリートブレーカーと類似しており,本体はコンクリートの土台上に据え付けられている.工場では鉱滓はつり機が故障したため修理することになった.
災害当日はミーティング及び当日の作業内容を確認後,午前9時から鉱滓はつり機の修理にかかり, 午後8時頃ブームシリンダーの交換を終了した.交換後鉱滓はつり機の試運転を行ったところ,油漏れが見つかったので急遽修理することになった.修理ではシリンダーからの油漏れによって油圧が低下し, ブームが下降すると予想されたので,まず鉱滓はつり機のブームのつりピースに玉掛けワイヤーを掛けて天井クレーンで巻き上げ,ブームを一定の高さに保持しておくことにした.作業は4名が当たり,A が床上操作式天井クレーンのペンダントスイッチによりインチング操作を行いながら巻き上げを行っていたところ,天井クレーンのホイストがクレーンの横行レールから外れて落下し,一緒に修理作業に従事していた3名の作業者にホイストが当たり,1名が死亡,2名が負傷した.
このクレーンには過電流検出型の過負荷を防止する装置が取り付けられていたが,この過負荷を防止する装置は操作スイッチを1.2秒以上押し続けないと作動しないように設定されており,A はこれを知らずにインチング操作を行ったため,過負荷を防止する装置が作動しなかった.ホイスト落下後横行レールスパンを調べたところ,スパンは60cm であって所定の幅を保持しており変形は見られなかった. しかし,レール下のフランジには塗装の剥がれた跡がホイストの落下位置において認められた.これは, 落下位置付近に大きな荷重がかかったためと推察される.
鉱滓はつり機のブームには油漏れが起こってもブームの下降を抑止するためのチェック弁が付いており,ブームはロックされた状態となっていて,外部からの力によってブームを起こすことは出来ない状態になっていた.しかし,4名の作業者はブームがロックされる機構となっていたことを知らずにブームに玉掛けしてつり上げたため,ホイストに過荷重
が作用する結果となった.なお,クレーンを操作したA はクレーン運転免許を,また,他の3名は玉掛け技能講習を修了していた.
 
 
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