クレーンの災害事例
CR05031
事  例

積載形トラッククレーンで電柱を荷下ろし中,機体が転倒し作業者が死傷する

[原因と対策]
業  種 建設業 機  種 積載形トラッククレーン
被  災 死亡 1名・不休 1名 現  象 機体、構造部分が折損、倒壊、転倒
 
あらまし 本災害は電柱を設置するため,積載形トラッククレーンの荷台に積んだ4本の電柱を1本ずつ1点つりにして荷下ろし中,3本目をつり上げた際に4本目が転がってつり荷に当たり,バランスを失って機体が転倒すると共に転がった電柱が落下して,作業者や運転者が電柱やトラッククレーンに激突して死傷したものである.
  災害が発生した現場では幅5.5m の未開通の舗装道路と未舗装の幅約3m の歩道に沿って電柱を設置しており,M 社とN 社の二つの請負会社が混在しながら作業を行っていた.
  災害当日は午前8時頃からM 社の作業者B とCがスノーポールと呼ばれる柱の基礎を埋め込む作業を行っていた.電柱の設置を請け負ったN 社は, 午後2時頃,つり上げ荷重2.93t の積載形トラッククレーンの荷台に電柱4本(一本の質量が2.4t,長さ16m)を積んで現場に到着した.荷ほどき後,電柱を道路に平行に下ろす準備に取りかかった.
  まず,N 社のA は荷下ろし側となる車両左側のアウトリガーを舗装道路の端付近に来るようにして最大張り出しに,反対側(車両右側)は他の工事車両の通行の妨げになることから最小張り出しに設置した.次にA は電柱の重心位置を示すマーク付近に目通し深絞り一点つりで玉掛けして,1本ずつ荷台からつり下ろした.2本までは何事もなくつり下ろしたが,3本目の電柱をつり上げたところ,4本目の電柱が荷台上で車両右側に転がって,つり上げ中の3本目の電柱に当たり荷が振れを起し,積載形トラッククレーンが車両右側に転倒すると同時に, 転がった4本目の電柱も落下した.このときA は車両右側の最小張出しのアウトリガー付近でクレーン操作していたが,両足が積載形トラッククレーンと激突して負傷し,また,近くで作業していたB は,荷台から転げ落ちた電柱の直撃を頭部に受けて死亡した.
  転倒直前のジブ長さは4.3m,ジブ傾斜角は45度, その位置での定格総荷重は1.28t,旋回角は荷台中心から左15度程度であって,定格総荷重を超えていた.災害発生時の天候は晴れ,風速は3m/毎秒程度であって,災害の発生に風は殆ど影響していなかった.
  なお,玉掛け及びクレーン操作を行ったA は小型移動式クレーン運転技能講習及び玉掛け技能講習を修了していた.
 
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