クレーンの災害事例
CR05041
事  例

移動式クレーンで補助ジブを取付け中,補助ジブが落下しクレーンとの間に挟まれる

[原因と対策]
業  種 一般貨物輸送業 機  種 ホイールクレーン
被  災 死亡1名 現  象 ジブの落下
 
あらまし 本災害は,高さが19.3m の浄水場建家の屋上に送風機を搬送するように依頼された運送会社がつり上げ荷重25.2t のラフテレーンクレーンを現場に持ち込み,運転者が補助ジブの取付けをしていたところジブが落下し,運転者がクレーンと補助ジブとの間に挟まれたものである.
本災害は,浄水場の構内で発生した.災害発生当日,元請けの現場代理人が9時半頃,代理人はクレーン運転者を伴い,機械の搬入場所である建家の屋上に上がり,搬入方法や経路の確認を行った.このとき運転者は主ジブだけでは揚程が不足するので, 補助ジブを取付ける必要があることを代理人に伝えた.10時頃ラフテレーンクレーンに戻った運転者はアウトリガーを全張出しに設置し,補助ジブの取付け作業に一人で取りかかった.10時45分頃現場代理人がクレーンの所に戻ったところ,クレーンのエンジンがかかり外部表示灯が点滅していて,補助ジブ根元部が地面に着いたような状態で補助ジブが外されていた.代理人が運転者を探したところ,運転者が胸部と腹部を補助ジブとクレーンの間に挟まれているのを発見した.直ちに病院に収容したが,外傷性ショックで死亡した.
災害発生後クレーンの周囲を調査したところ,主ジブ先端の左右に張出しているフートピンに補助ジブ根元を取付ける際,右側に挿入しなければならないNo.1ピンが落下しているのが発見された.このピンの表面には擦り傷が残されており,また一部が若干変形していた.このような状況から補助ジブを主ジブに取付ける作業中に事故が発生したと推察された.補助ジブは通常主ジブの側面にNo.1とNo.2の2本のピンで取付けられており,補助ジブを主ジブ先端に取付ける場合は,最初にNo.1ピンを外してから,主ジブ側面の油圧シリンダーで補助ジブを主ジブの側面から下面へ下ろし,主ジブ先端の右側のフートピンに補助ジブ根元に加工したU 字形溝の右側を入れる.そして補助ジブが抜けないように,フートピン右側端に先程抜いたNo.1ピンを挿入する. 次にNo.2ピンを外し,補助ジブ根元の左側のU 字形溝を主ジブ先端の左側フートピンに入れて,フートピン左端にNo.2ピン(兼用)を挿入し,補助ジブを主ジブ先端に取付ける.なお,No.1とNo.2の2本のピンを同時に外すと補助ジブが落下するので非常に危険であり,細心の注意が必要である.
本災害の場合目撃者がおらず原因の特定は困難であるが,現場の状況から推察すると,運転者が主ジブ先端の右側フートピンにNo.1ピンを確実に挿入していなかったか,あるいはNo.1ピンが抜け落ちて補助ジブが落下したと推定される.なお,運転者は移動式クレーン運転免許取得後20年以上業務に従事していることから,補助ジブの取付けもこれまでに経験していたと推察される.
 
 
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