クレーンの災害事例
CR05121
事 例
移動式クレーンで水門扉を設置中,門扉を立て掛けた突っ張り材が外れ倒れた門扉と壁の間に作業者が挟まれる
業 種
一般機械器具製造業
機 種
積載形トラッククレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷の転倒による挟圧
あらまし
本災害は,雨水管ピットの水門扉設置工事において,被災者とその他共同作業者3名でピット内(深さ約2m)からステンレス製水門扉(縦1.69m,横1.85m,幅0.24m,質量775kg,以下門扉と呼ぶ) を積載形トラッククレーン(つり上げ荷重2.93t) でつり出す作業において門扉が壁に倒れ掛かり,作業者が門扉と壁との間に頭部を挟まれたものである.
災害発生当日は,同工事請負会社の工場において8時30分から水門設置工事に関係する作業者に対して工事責任者から作業内容の説明が行われた.その際予定していた作業内容は門扉が通るガイドレールである「戸当り」の取り付け箇所の状態確認と,溶接などの不良箇所の修正であった.現場に到着した作業者A,B 及びC(被災者)の3名が予定通り「戸当り」の溶接箇所の状態確認,油圧装置設置箇所の墨出し作業を行っていたところ,午前10時30分ごろ工事責任者が現れ,門扉が戸当りに収まるかどうか確認しておくよう指示された.
作業者3名はその指示に従って一旦工場に戻り, 昼食を挟んで門扉をクレーンに積み込み,午後2時ごろ現場に戻った.作業は,もう一人の作業者Dを加え,4人で門扉をピット内部に斜めにつり入れて,ピット内部で引き起こして立てた状態で,戸当りとの収まり具合を確認し,その後は逆の手順でピット内部から門扉を取り出すというものであった.
その後,門扉をピットから取り出す作業に取り掛かり,まず,つり荷を安定した状態でつり出すため, 逆L 字型角材を介して壁に寄り掛からせ,その状態で,玉掛け方法を,クランプと玉掛け用ワイヤロープを組み合わせた方法からベルトスリング2本つりに変更した.次に,作業を容易にするためつり荷を少し巻き上げて右旋回させた後,元の状態で壁に寄せ掛からせた.その後,作業者B がピットの天井のある位置から天井開口部の下に門扉を移動させるために用いるバールを取ろうとしていたところ, 逆L 字型角材が外れて門扉が直接壁に寄りかかった.B が振り返ると,共同で作業をしていたC がピット内壁と門扉との間に頭部を挟まれていた.
なお,この災害では,作業者の資格関係に問題はなかったが,クレーン作業はアウトリガーの張出しが不十分で,かつ前方つり状態で明らかに過負荷であった.また,被災者がなぜつり荷の裏側に立ち入ったかは不明である.