クレーンの災害事例
CR06021
事 例
移動式クレーンでつり上げ作業中の鉄骨柱がクランプから外れて落下し玉掛け者が下敷きになる
業 種
物品賃貸業
機 種
ホイールクレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷の落下
あらまし
本災害は,鉄骨造りの平屋工場棟の建築現場において,移動式クレーン(つり上げ荷重35.33t)を用いトラック荷台から鉄骨柱を荷下ろしする作業中,被災者と建築会社(N 社)の社長の2人が玉掛けを担当し,鉄骨柱(長さ8.5m,質量約0.8t)の長手方向中央部につりクランプを掛け,2本吊り状態で玉掛けし(玉掛け用ワイヤロープ長さ1.03m),運転者が移動式クレーンで荷をつり上げたところ,高さが3~4m になったところでつり荷がバランスを崩して傾斜し,まず片方のクランプが外れ,つり荷が反転してもう一つのクランプも外れたため,つり荷が落下し,荷台上の運転室寄りに退避していた被災者がその下敷きとなったものである.
災害発生当日,被災者は10t トラックを運転し,N 社で鉄骨柱を積み込み建築現場に到着した.
直ちにトラックからの鉄骨柱の荷下ろし作業に取りかかった.この作業では,N 社社長が作業指揮者,被災者の上司が移動式クレーンの運転,被災者とN 社社長がトラック荷台上での玉掛けを担当した.その際,3人での作業開始前の打ち合わせは特に行われなかった.
被災者とN 社社長がトラック荷台に上がり,最上段に積まれた鉄骨柱のH 形鋼断面の両側下端のそれぞれ1箇所に開口部を上に向けて横つり用クランプを掛け,2点つりの方法で玉掛けした.次に,指揮者が片方の手でつり荷を押さえた状態で,地切りを2,3回繰返し,つり荷が水平になるようにクランプ位置を調整した.
指揮者はトラック荷台から降りて,鉄骨を仮置きする場所に移動し,被災者はつり荷直下を避けて荷台の運転室側に移動した.これを見て,運転者はつり上げ準備完了と判断し,鉄骨柱のつり上げ作業に取りかかった.
あらかじめブームを少し起こし,巻上げ操作を続けつり荷の高さが3~4m になったところでつり荷がバランスを崩して傾斜し,最初に片方のクランプが外れた.そのためつり荷が反転してもう一つのクランプも外れ,つり荷が落下し,荷台上の運転室側に退避していた被災者がその下敷きになった.
なお,3人の作業者はそれぞれ必要な資格を有しており,作業方法については過負荷の問題はなかった.クランプのカムが使用禁止の基準以上に摩耗しており,玉掛け用具の点検の不備が確認された.