クレーンの災害事例
CR06031
事 例
解体したトラックの荷台を天井クレーンでつり上げ中,玉掛け箇所が破損して落下し荷台上の解体部品が被災者に激突する
業 種
自動車解体業
機 種
天井クレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷、つり具が激突
あらまし
本災害は,自動車解体工場内において,解体したトラックの荷台(以下,「つり荷」という.)を移動するため,同工場に設置された2基の天井クレーン(つり上げ荷重:北側4.86t,南側4.87t)を用い荷台を高さ約2.5m までつり上げたところ,つり荷の玉掛け箇所が破損してつり荷が落下し,玉掛け作業のためにつり荷に乗っていた被災者が,つり荷上に載せていたシャーシの車軸部分に激突され死亡したものである.
災害発生当日,被災者A を含む4人の作業者は,朝から同工場において,「手バラシ」と呼ばれる自動車解体の作業に従事した.その途中,午後3時頃,被災者が工場北側にあるピットで解体した大型トラックの荷台を,2基の天井クレーンを使用してピット中央部に移動し,さらに,他の班の解体した車両のシャーシをその荷台の上に載せた.
午後8時頃,ピットに仮置きした上記のトラック荷台(つり荷)を2基の天井クレーンを用いて南側へ移動する作業を行った.作業は,「ともづり」で実施し,玉掛けは,作業者B と被災者がつり荷に上がって,つり荷の前方,後方それぞれに玉掛け用チェーンを用い,そのフックを荷台の左右にある荷掛けフックに掛けて4点づり状態とした.
フックの掛かり具合の確認のため,作業者B は,被災者と二人で荷台に乗ったまま,片方のクレーンを運転してつり荷の後方だけを床面から約30cm つり上げ一旦停止してしばらく様子を見た.その状態でクレーンとつり荷に異常が認められなかったので,運転者C が,荷台に乗っていた作業者B と被災者に向かって「上げます」と合図をして両クレーンを操作し,つり荷を床面から約2.5m の高さまでつり上げた.
そのとき,つり荷後方に掛けていた2箇所の荷掛けフックが外れ,その反動でつり荷前方のチェーンが勢いよく外れて,つり上げていたつり荷がピットに落下した.つり荷に乗っていた被災者は,落下時につり荷に載せていたシャーシの車軸部分が胸部に激突し死亡した.なお,一緒につり荷に上がっていた作業者B は荷台に全身を強く打ち付けられたが負傷しなかった.
本件のクレーン作業では,つり荷荷重はほぼ3トンと推定され,クレーンにとっては過負荷状態とは考えられない.しかし,荷台フレームの荷掛けフック部分は事故時に4箇所とも破損しており,その破損箇所は著しく腐食していた.
また,クレーン作業を行った作業者B 及びC はともにクレーンの運転資格を有しておらず,被災者A と作業者B は玉掛けに関する資格を有していなかった.さらに,当日この工場にはクレーン作業の指揮および安全管理の担当者が配置されていなかった.