JCA cr02091

あらまし

　本災害は，不燃建材ボード製造工場において，被災者が一人で，テルハ（つり上げ荷重1.0t）を用い，不燃建材ボード（以下，「ボード」という．）の原料の入ったフレコンバッグをモーターを駆動させるときなどに使用するV ベルト（以下，「V ベルト」という．）によって玉掛けし，つったままの状態で，原料をホッパーに投入するため，バッグ底部の紐を解いていたところ，フレコンバッグが落下し，その下で作業をしていた被災者が，ホッパーの縁とフレコンバッグとの間に頚部が挟まれ死亡したものである．
　災害発生当日，被災者は，午前７時からボード製造用の原料の搬入作業を担当していた．作業は，テルハを用い，ボードの原料であるバーミキュライトの入ったフレコンバッグ（縦横100cm，高さ60cm，質量1.02t）を所定の原料置場から原料投入ホッパーまで移動し投入するものであった．玉掛けは，Vベルトを使用し，輪になったV ベルト１本をフレコンバッグの４隅にある布製の取っ手すべてに通して絞り，他端をテルハのフックに掛ける方法で行った．また，原料投入ホッパーへのバーミキュライトの投入は，ホッパー投入口の上で，フレコンバッグをつり上げたままの状態でバッグの底を縛っていた紐を解く方法で行った．
　作業開始後しばらくしてボード製造機械の操作を担当していた別の作業者が，原料が流れてこないので同機械を停止させ，原因を確認するために原料置き場に来て見たところ，被災者が原料投入ホッパーの中に頭を入れ，フレコンバッグとホッパーの縁に頚部を挟まれて脱力状態となっているのを発見した．
　被災者がフレコンバッグに挟まれる瞬間を目撃した者はいないが，事故の発生状況から，本件災害は，被災者がフレコンバッグの底を縛っていた紐を解いていたとき，玉掛けに使用していたV ベルトが破断し，つり荷が落下したために発生したものと推定される．使用されていたV ベルトは使い古され，各所にひび割れのあるものであった．
　なお，被災者はクレーン運転の特別教育を受けておらず，また，玉掛け技能講習も修了していなかった．