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あらまし

　本災害は，鉄筋加工工場において，積載形トラッククレーン（以下，「クレーン」という．）を用いて，橋脚建設用に加工した鉄筋束をトラックに積み込む作業中，被災者とトラック運転手A の２名で玉掛けした後，クレーンを操作して，荷をつり上げ，横付けしたトラックの荷台上へ旋回させて，指示された場所に下ろそうとしていたところ，クレーンがトラック側に転倒，被災者が跳ね飛ばされて，トラック荷台で頭部を強打したものである．
　災害発生当日，被災者及びトラック運転手A は，クレーン（つり上げ荷重2.93t）及びトラックを運転して，前日に積載していた加工済みの鉄筋束を橋脚建設工事現場に運搬した．その後，鉄筋加工工場に戻って２回目の運搬のため，鉄筋束をトラックに積み込む作業を開始した．その作業では，２人共同で鉄筋束（鉄筋12本，質量838kg）に玉掛けを行い，被災者がクレーンを操作し，A はトラック荷台に移動して荷下ろし位置の指示を担当した．その際，ジブを最大（9.8m）に伸ばした状態で，アウトリガーは，トラック側が最小張出し（約41cm），反対側は約1.2m に張出し，アウトリガーフロートには長さ1m，10cm 角の角材を敷いていた．
　被災者が，つり荷をつり上げ，横付けされたトラックの荷台上に旋回させ，荷台のやや奥の方（作業半径4.8m）に荷下ろししようとしていたところ，クレーンが傾き始めそのままトラック側に転倒した．トラックの運転手A はクレーンが傾き始めたのに気づいて，被災者に退避を指示して自分も退避したが，被災者は逃げ遅れて，転倒したクレーンに跳ね
飛ばされてトラックの荷台で顔面を強打した．
　なお，クレーンは，ジブを最大に伸ばし，アウトリガーを最小張出しにした場合は，「作業禁止」と定格荷重表に記されていた．
　被災者はクレーンの運転及び玉掛け作業の有資格者で，運転手A との作業分担等に特に不適切な点はなかった．