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あらまし

　本災害は，住宅改築工事現場において，積載形トラッククレーンを用いて，資材を仮設足場上に荷揚げする作業中に，当該トラッククレーンが助手席側アウトリガーを支点に回転するように横転し，被災者が車体の下敷きとなったものである。
　災害発生当日の午前，被災者A と同僚B は，前日にレンタルしておいた積載形トラッククレーン（つり上げ荷重2.33t・以下「クレーン」という。）を使用し，自社事業場から２箇所の客先に建築資材を配送する作業に従事していた。まず朝一番に，配送のための資材をクレーンの荷台に積み込み，９時ごろ同事業場を出発した。
　最初の配送先では，A が玉掛け及びクレーンの操作を，B が玉外し及び荷ほどきを担当して建築資材を荷下しした。
　２番目の配送先の住宅改築工事現場では（10時50分頃到着），A が足場に横付けする形でクレーンを停車させ，アウトリガーを両方とも最大に張出した。B は建物の３階に相当する足場で待機した。
　 A は資材つり上げ用鉄枠に建築資材を乗せ，玉掛け用ワイヤロープをクレーンのフックに掛け，助手席側の操作部でクレーンを操作した。
　さらに，つり荷を上限付近まで巻上げ，ジブを約70°まで起こし，しかも最大に伸長（6.4m）させて右旋回を開始した。ジブがクレーンの正面近く（車両中心線から約10°）まで旋回したとき，クレーンの後部が浮き上がり，車体が助手席側のアウトリガーを中心に回転するように転倒し，A が車体の下敷きとなった。
　なお，A は，玉掛け技能講習を修了していたが，移動式クレーンの運転に係る資格は取得していなかった。また，A の所属する事業場では安全衛生教育が実施されておらず，さらに，本件作業についての作業計画も作成せず，資格の確認，無資格者の要資格業務への従事禁止措置も講じていなかった。