クレーンの災害事例
CR08041
事 例
移動式クレーンで位置調整のためつり上げようとしたL 型擁壁が倒れて作業者がその下敷きになる
業 種
河川工事業
機 種
ホイールクレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷の転倒による挟圧
あらまし
本災害は,国道に掛かった道路橋の下を通る水路の改修工事現場において,つり上げ荷重16t のラフテレーンクレーンを用いて水路にL 形擁壁を並べて設置する作業における位置補正作業中に,擁壁が後ろに倒れ,その背後にいた作業者が下敷きになったものである。
災害発生当日,道路橋下の水路改修工事現場ではラフテレーンクレーンを用いて,被災者A および作業指揮者B を含む6人の作業者で,14個のL 形擁壁(幅66cm×奥行200cm×高さ236cm,厚さ16cm,質量1.718t)を設置する作業を行っていた。5個のL 形擁壁設置後,B が真ん中の1個が前のめりに傾いていることに気づき,補正作業に取りかかった。はじめに,擁壁の底板先端部にバールを入れて持ち上げようとしたが人力では動かなかったため,ラフテレーンクレーンを使用して補正を行うこととした。その際,玉掛けはB 自身が担当し,同擁壁の底板先端に突き出ている15本のジョイント鉄筋のうちの1本に玉掛け用ワイヤロープを掛け,Bの合図でクレーンの巻上げ操作を行った。ワイヤロープが緊張したと同時に同擁壁が後ろ方向に転倒し,擁壁の背後にいたA がその下敷きになった。
なお,本工事現場においては,L 形擁壁への玉掛けは本来底板先端部に出ている鉄筋のうちの1本と背面にある2つのフックの合計3箇所の3点つりで行うことが定められていた。当日はその点について元請の現場代理人からも指示が出されており,当日の作業も事故発生までは3点つりで実施していた。しかし,B は資格を有していないにも拘わらず玉掛けを担当し,しかもその定められた玉掛け方法を遵守していなかった。
また,B は現場への入場が初めてであるA に対し雇入れ時教育を実施しておらず,元請の行っている新規入場者教育も受けさせていなかった。さらに,当日のA の現場への入場についても元請に連絡していなかった。なお,クレーン使用時にA がなぜ擁壁の背後にいたのかは不明であるが,巻上げ合図に際して,B はA の存在を確認していなかった。