クレーンの災害事例
CR08091
事 例
移動式クレーンでつり下ろそうとした支保工用切梁がブラケットから外れて大きく振れ介錯者に激突する
業 種
水路建設工事業
機 種
ホイールクレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷、つり具が激突
あらまし
本災害は,雨水幹線築造工事現場において,25tつりラフテレーンクレーンを使用して,土止め支保工材である切梁(H 鋼,長さ約10m,質量約1.45t)を撤去する作業中,その切梁の片方が,左岸腹起し支持用のブラケットに乗った状態から急に外れ,その弾みでつり荷の切梁が大きく振れ,トラロープで切梁の介錯を行っていた被災者に激突し,被災者が鋼矢板とつり荷の間に頭部を挟まれ被災したものである。
切梁撤去作業の作業手順は,以下のとおりであった。
①
現場の職長代理B がシャックル2個とワイヤロープにより切梁に玉掛けし,作業者D が介錯用トラロープを装着する。
②
D の合図により,移動式クレーンの運転者Cが巻上げを行いワイヤロープを張る。
③
作業者D 及びE が切梁と腹起こしを接合するボルトを緩め,B が切梁を張るために取り付けたジャッキを緩める。
④
D 及びE が緩めたボルトを取外し,被災者A がトラロープで介錯しながら,切梁を底版から高さ1.5m まで下ろす。
⑤
切梁を下流の置き場までクレーンで移動させ,そこで解体を行う。
この一連の作業を7本の切梁まで完了し,8本目の作業の際に災害が発生した。
8本目の切梁につき③の手順まで終了したが,切梁の片端(左岸側)が,腹起しを支えるブラケットに乗った状態であるため,直接巻下げできないことから,一旦巻上げ操作してブラケットからずらして下ろすこととした。ところが,切梁の両端とも腹起こしに引っ掛かった状態で巻上げることができなかったため,まず片方だけ外そうと,B が運転者Cに巻下げを合図した。その操作で切梁の右岸側が腹起こしから外れたので一旦巻下げを停止させた。しかし,左岸側がなおブラケットに乗った状態であったため,B はさらに巻下げを合図した。この時点で被災者A は既にトラロープを持ち,切梁から約4m離れた位置で,切梁の右岸側端部を下流側に引張って保持していたが,運転者C がB の指示にしたがって巻下げを続けたところ,急に切梁の左岸側がブラケットから外れ,切梁の右岸側が被災者A の方に大きく振れた。この時,作業者D は金属の衝突したような音が聞こえたため,あわてて下流側に逃げたが,振り返ってみると,被災者A が,トラロープを持たずに切梁の右岸側端部を両手で持っている姿が見えた。その直後に被災者A はその切梁端部と右岸側の鋼矢板との間に頭部を挟まれ被災した。