クレーンの災害事例
CR08111
事  例

トラックに積載したクローラクレーンをつり下ろす作業中にトラッククレーンが転倒する

[原因と対策]
業  種 電気設備工事業 機  種 トラッククレーン
被  災 死亡 1名 現  象 機体、構造部分が折損、倒壊、転倒
 
あらまし  本災害は,駅舎新築工事において,トラックの荷台に載せたクローラクレーンを,トラッククレーンを使用して荷下ろしする作業において,玉掛け用ワイヤロープで玉掛けしたクローラクレーンをつり上げ,旋回および巻下げの操作を行っていたところ,トラッククレーンが,つり荷側に転倒し,トラッククレーンを運転していた被災者が運転席から転落してその下敷きとなったものである。
  災害発生当日,被災者ら8名は,午後11時30分ごろ工事現場に近い上記の場所に集合し,①トラックからのクローラクレーンの荷下ろし,②線路北側での電車の見張り,及び③道路上での車両の誘導の作業に取り掛かった。ところが,上記①の作業については,元々,歩み板をトラックに取り付けその上をクローラクレーンに自走させる計画で,事故直前,現場指揮者もそのように指示したにも拘らず,作業の直前になって,被災者の提案で,急遽,トラッククレーンを使用してつり下ろす作業方法に変更された。これは,事前に現場を調査した被災者が,クローラクレーンを自走させて下ろす方法は危険であると判断し,代わりの方法として提案したためであるが,この現場では被災者が移動式クレーンの運転業務の経験が最も長く,事実上の安全衛生管理及びクレーン作業の責任者でもあったこと,また,被災者がトラッククレーンによるつり下ろし作業の準備もしていたこともあって,現場指揮者および他の共同作業者もその提案に従ったものである。
  まず,トラック荷台上で玉掛け用ワイヤロープを用いてクローラクレーンに玉掛けし,次に,被災者がトラッククレーンを操作して,荷をつり上げ,その後旋回及び巻下げを行っていたところ,過負荷の状態となり,同トラッククレーンがつり荷側に転倒した。その際,被災者が運転席から地上に転落し,転倒した同クレーンの下敷きとなって死亡した。
  なお,本件トラッククレーンには,安全装置としてACS 非常スイッチ(自動復元式)が設置されていたが,災害発生時にはこれが解除された状態であり,しかも,そのことは,作業者責任者を含めたその他の現場作業者は認識していなかった。
  一方,同トラッククレーンの災害発生時の負荷条件の検討の結果,その条件下では,クレーンアームを約235度旋回した方向(トラックから荷をつり上げる場所から南へ約55度旋回した方向)で転倒が発生するとの結論が得られたが,その推測は災害発生時の状況と概ね一致している。
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