クレーンの災害事例
CR09021
事 例
傾斜した移動式クレーンのジブを引込み中,つり荷が振れて作業者に激突する
業 種
木造建築工事業
機 種
ホイールクレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷、つり具が激突
あらまし
本災害は,住宅新築工事において,移動式クレーンを用い,建方用の材料を移動させていた際に,同クレーンが傾き,車庫や足場に倒れ掛かったため,巻下げ操作でつり荷を地上に下ろし,ジブを引き込ませたところ,クレーンが起き上がり,つり荷が引張られて振れたため,玉掛け用具を荷から外そうとしていた被災者に激突したものである。
災害発生当日,現場では現場責任者A,被災者を含む作業者10名で,4.9t の移動式クレーンを用い,前日の雨で延期されていた建方を行う予定であった。まず朝一番に,オペレーターが現場に移動式クレーンを移動させ,左側アウトリガーは中間張出しより約10cm 長く,右側は中間張出しより約5cm短い状態で設置した。次いで,建方に取りかかろうとしたが,基礎の上に置かれていた建方用の材料が作業の邪魔になるため,移動式クレーンを使用して,その材料の三つの束を基礎の上から足場を越えた位置に下ろすことにした。その作業ではA がベルトスリングを用いて玉掛けを行い,別の作業者Bが移動式クレーンのオペレーターへの合図を担当した。1回目は質量約600kg の荷をつって,ジブを伸ばしながら移動させた。2回目からはジブ長さは変えずジブの角度と方向を変えて移動させた。3回目に質量約900kg の材料の束を移動させていたところ,足場を越える直前(作業半径約13m)で過負荷防止装置の自動停止機能が作動した。しかし,合図者はそれに気付かず,オペレーターに移動の合図を送り,オペレーターもあと少しで荷下ろし位置に達すると判断し,自動停止機能を無効にしてジブを伏せる操作を続けたところ,荷が足場を越えたあたりで同クレーンが傾き,ジブが車庫及び足場に倒れ掛かって停止した。この時点でつり荷はなおつられた状態であった。そこで,傾いた移動式クレーンを元に戻すため荷を地面に下ろそうとして,オペレーターは運転席に残って巻下げ操作を行った。ところが,荷が地面に着き被災者がフックからベルトスリングを外すため荷に近づいたとき,オペレーターがジブを縮める操作を行ったため,ジブが1m ほど縮んだところでクレーンが起き上がって元に戻り,つり荷がクレーン側に引張られる形で振れた。そのため,フックを外そうとしていた被災者が荷に激突され,さらにつり荷と先に運んだ材料の間に挟まれた。