JCA cr09031

あらまし

　本災害は，NC5面金属加工機（以下，加工機という）による荒削りが終わった大形プレス用鉄製台車を，床上操作式の天井クレーンを使用して仮置き場に移動させる作業中，その台車の後部が，近くに積まれていた別の台車に接触し，反動でつり荷である台車が振れ，クレーンを操作していた被災者がつり荷と別の台車との間に頭部を挟まれたものである。
　災害発生当日，被災者と同僚A は天井クレーンを使用してトラック荷台から製品を工場内に仮置きする作業を行った後，同加工機に固定した大形プレス用台車の上面荒削りを行った。その後，A が被災者及び同僚B に依頼し，加工した台車を工場内の出入口付近に移動させ仮置きする作業を行うことになった。A がクレーン（つり上げ荷重30.38/7.58t；ペンダントによる床上操作式）を運転し，B が台車の側面の４箇所の穴にチェーンスリングのフックを引っ掛けて玉掛けし，まず台車を約1.4m の高さまでつり上げた。この時点で，A は別の用件のため，クレーンのペンダントを被災者に渡し，あとの作業を被災者とB に依頼して現場から離れた。その後，被災者がクレーンを運転して台車を加工機の端まで移動させ，そこで一端止めて二人で押して台車を時計回りに約90度回転させた。次に，B は台車を置く場所に番木を置くためにつり荷から離れた。被災者は一人で，台車を仮置き場所に移動させるためにクレーン操作を行いながら移動していた。しかし，その移動経路には，つっている台車と同型の台車等が床に積み上げられていたため，被災者はこの同型台車等とつり荷台車の間隔を1m ほど離して移動していたが，つり荷台車の後部側面が，積まれていた同型台車等の高さ1.4m 付近に接触し，その反動で，つり荷が振れ，被災者がつり荷と同型台車との間に頭部を挟まれ死亡した。
　なお，本件において，A はクレーン及び玉掛け作業の資格を有していたが，災害発生時に作業していた被災者及びB はそのいずれの資格も有していなかった。