クレーンの災害事例
CR09051
事 例
積載形トラッククレーンで定置網を広げる作業中,同クレーンが横転し作業者が岸壁から転落する
業 種
水産業
機 種
積載形トラッククレーン
被 災
死亡 1名
現 象
その他の墜落
あらまし
本災害は,定置網の定期交換作業中,積載形トラッククレーンの荷台に積まれた漁網を,被災者等が,当該クレーンのフックに取りつけた網捌き(さばき)機を用いて岸壁に広げていたところ,突然同クレーンが横転し,同網捌き機とともに被災者が転落し死亡したものである。
災害発生当日,上記18名は早朝の定置網漁を終えて帰港し,朝食後7時50分頃から定置網の交換作業に取り掛かった。新品の定置網は4つの部分から構成されているが,まず,2つの部分を荷台に載せた積載形トラッククレーン(つり上げ荷重2.93t)を岸壁の端に近い場所に設置した。この際,運転手は漁労長の指示によりアウトリガーを助手席側のみ最大張出しとした。
次いで,4段のジブ全てを最大に伸ばし,網捌き機(重さ500kg)に取り付けてあるシャックルを直接同クレーンのフックに玉掛けし,荷台に載せてある2つの漁網のうちの1つ目を網捌き機の滑車に通してから,ジブを一定の高さまで起こしてつり上げ,地上にいる作業員数名が人力で引張りながら岸壁にその網を広げていった。その際,クレーン運転手は網が広げられる方向にジブを若干旋回させた。1つ目が終了し,2つ目も同様の作業を行っていたが,荷台に積まれていた網が徐々に少なくなり,荷台が軽くなったところで,突然同クレーンの車体が網をつった方向(運転手が操作していた助手席側)に傾き横転した。その際,運転手は退避したが,横転後,周囲の状況を確認したところ,事故直前に岸壁の端に立っていた被災者が,網捌き機とともに岸壁に係留された網船の上に落下して倒れているのが発見された。救急車で病院に搬送されたが間もなく死亡した。
本件においては,クレーン運転手は小型移動式クレーンの運転資格を取得していなかった。また,アウトリガーを一部張り出さない状態で作業していたが,検討の結果,アウトリガーを全張出しにしていたとしても過負荷の状態であったと判断された。さらには,移動式クレーンに係る定期自主検査や日常点検も実施されていなかった。