クレーンの災害事例
CR09061
事  例

エレベーター搬器天井上で搬器固定作業中に落とした工具が昇降路底部ピットにいた作業者に激突する

[原因と対策]
業  種 機械設備工事業 機  種 エレベーター
被  災 死亡1名 現  象 その他の落下
 
あらまし  本災害は,作業者2名で12階建て既設マンションの乗用エレベーターの制御機器交換作業中,作業者A が11階と12階の間に止めたエレベーター搬器の天井に乗って搬器固定作業を行っていたところ,腰袋(手工具入れ)の中の工具が抜け落ち,ピット部分で作業していた被災者B の頭部に当たったものである。
  災害発生当日,作業者A 及びB の2名は,既設マンションの3号機エレベーターの制御機器交換作業の準備作業として,搬器を固定する作業を行う予定であった。午前9時頃から約30分間,同マンション集会室で当日の作業の打合わせを行った後,3号機エレベーターに向かった。台車に溶接機,チェーンブロック等作業用具を載せて12階に運んだ後,作業通路に当たる箇所に養生シートを張り,各階に柵を置く等の作業を行った。続いて,2人で12階出入口に行き,搬器を自動で11階に下げ,12階出入口扉を開けて搬器天井に乗り移った。扉を閉めた後,手動運転で搬器を昇降路最上部近くまで上昇させ,台付けワイヤロープとチェーンブロックを搬器両サイドの2箇所に仮掛けした。続いて,交換するワイヤロープの張力をなくすために搬器の位置を固定する作業に取り掛かった。この作業では,作業者A が搬器の天井上に,被災者B は昇降路最下部のピット内に移動し,まず,A が手動で搬器を少し下げてカウンターウェイトを上昇させ,B が長さ2m の搬器支持パイプを緩衝機の中央にセットし,2人で声を掛け合いながら,A が搬器を少しずつ上げてカウンターウェイトを下して支持パイプと接触させた。この作業が終わったことを2人で確認した後,A はチェーンブロックで搬器を固定し,携帯電話で,現場代理人C を介し,ピットから出るよう伝言した。ところが,その直後,A が残りの作業を行っていたとき,A の腰袋からラチェットレンチが抜け落ち,まだピット(約33m 下)の中にいた被災者の後頭部を直撃し,被災者は無意識の状態で病院に搬送されたが,数日後に死亡した。
  なお,本件災害発生時,作業者2名はいずれもヘルメットは着用しておらず,又搬器上での作業において,物体の落下による危険防止の措置は何らとられていなかった。
 
 
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