クレーンの災害事例
CR09081
事 例
移動式クレーンででつり下ろしていたドラム缶が専用クランプから外れて落下し,下で合図をしていた被災者に当たる
業 種
その他の建築事業
機 種
ホイールクレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷の落下
あらまし
本災害は,石油精製工場の補修工事において,移動式クレーン(つり上げ荷重25t)を用いて,塩素除去塔の頂部ステージ(高さ約13m)から地上にセラミックボール入りドラム缶をつり下ろすため,専用クランプ1個をドラム缶に掛けて玉掛けし,ドラム缶を2m ほどつり上げたところ,同クランプが外れてドラム缶が落下,頂部ステージ上で合図をしていた被災者に当たったものである。
災害発生当日,現場では,被災者の所属する事業場の事業主,被災者,移動式クレーン運転士を含む6名で,塩素除去等の充填物の抜き出し及び充填作業を予定していた。その作業の手順は,順に塩素除去塔上部のマンホールの開放,充填物上層のセラミックボールの抜出し,中間マンホールを開放しての塩素還元剤の抜出し,下層のセラミックボールの抜出し,同塔への新品のセラミックボール及び塩素還元剤の充填である。本件災害は上部層のセラミックボールの抜出し工程で発生した。この工程では,まずマンホール内からペール缶(直径30cm,高さ約50cm)に入れて移動式クレーンによってつり上げたセラミックボールを頂部ステージ上でドラム缶に移す作業を,ドラム缶が一杯になるまで続ける。ドラム缶が一杯になった時点でドラム缶に天ぶたを載せ,ドラム缶本体のカール(縁)と天ぶたのカールを合わせ,両カールを包み込むようなリング状固定金具(バンド)を取り付け,それをボルトとナットで周方向に締め付ける。そのバンドの上下をリンク機構で挟みこむ専用の玉掛け用クランプ(以下,ドラムグリッパー:許容荷重300kg)1個を用いて玉掛けし,無線で移動式クレーンの運転士に指示して吊り下ろす作業を繰返す。本件発生時,その作業を2回終了し,3度目としてまず被災者がドラム缶(約300kg)に玉掛けしたが,その際,被災者の判断でドラムグリッパーを掛け直してから移動式クレーンの運転士に合図してつり上げを開始した。ところが,つり荷が上部ステージから2m ほど上昇した時点で,ドラムグリッパーから(天ぶた,バンドを残し)ドラム缶本体が外れて落下し,その下にいた被災者が腰部を直撃され,救急車で病院に搬送されたが出血性ショックで死亡した。なお,落下の直前につり荷が振れ,あるいは回転したようなことはなかった。