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あらまし |
本災害は,空調設備用のケースを製造する工場において,被災者が3階から工場内のエレベーターに乗ったところ,搬器の床に設置されていたベニヤ板が鉄枠から外れたため,そのまま1階の昇降路底まで墜落し,死亡したものである。
災害発生当日,午前中,被災者は同工場において手持型のグラインダーを用いて,空調設備ケース部品のバリ取りを行っていたが,業者が製品の引取りに来たため,製品を工場入口まで運搬する作業に移った。この作業は,3階に保管された製品をパレットに載せ,エレベーターを使用して1階の工場入口まで運搬するものである。ところが,この搬出作業を終え,空になったパレットを同エレベーターにて3階に運んでいる様子を,2階で作業をしていた同僚が目撃してからしばらくして,1階でNC プレスブレーキを使用して作業していた工場長が,エレベーターの方からのドサッという音を聞き見に行ったところ,エレベーター昇降路底(1階コンクリート床)に被災者が倒れているのが発見された。
当時使用されていたエレベーターは2階用を3階用に改修工事中のもので,搬器及び昇降路には囲いも戸も設置されておらず,床面はベニヤ板2枚(厚さ13mm,奥行き1,580mm,幅は900および1,090mm)を床枠の鉄骨材の上面に並べて載せ,それぞれの板の角2箇所をクランプで床枠に固定しただけの未完成の状態であった。また,事故の原因となった床材のベニヤ板は事故後に搬器内に残っていたが,クランプから外れ,クランプで締めていた角は破損して一部欠けた状態となっていた。
本件災害の発生の瞬間を目撃した者はいないが,上記のような作業の経緯,搬器床の構造,事故後の状況から判断して,本件は,被災者が最後のパレットを3階に運び終え,1階に戻るため同エレベーターに乗ったところ,被災者が乗った入口側の端が搬器床枠から外れたことにより,同ベニヤ板が天秤状に回転し,被災者は支えをなくしてそのまま3階の位置から1階のコンクリート床まで昇降路内を墜落したものと推測される。 |
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