クレーンの災害事例
CR09101
事 例
建設資材を荷下ろし中の積載形トラッククレーンが転倒し,近くでトラックから鋼管を下ろしていた被災者にジブが激突する
業 種
家屋建築工事業
機 種
積載形トラッククレーン
被 災
死亡 1名
現 象
機体、構造部分が折損、倒壊、転倒
あらまし
本災害は,工場棟の増築工事現場において,現場監督のA が積載形トラッククレーン(つり上げ荷重2.93t)を使用し,現場に別のトラックで搬入された建設資材の荷下ろし作業中,当該クレーンがバランスを崩して左側に転倒し,ジブが,トラックで荷台からコンクリート打設準備のため鋼管を下ろす作業をしていた被災者に激突したものである。
災害発生当日,現場では朝から工場の土間へのコンクリート打設の作業が予定されていた。その作業は,元々は,補強のための鉄筋組みを行ってからコンクリートを打設するよう計画されていたが,その計画は,コンクリートに予めコンクリート強化材(スチールファイバー)を混入して強化する方法に変更されていた。
現場監督A は,現場に到着と同時に,下請け会社からの要請に従って,まず,コンクリートポンプ車と資材運搬用のトラックの停車位置の確保のため,積載形トラッククレーン(以下「移動式クレーン」という。)を移動させた。その後,現場にコンクリート強化材を積んだトラックが到着したため,直ちに,当該クレーンを使用してトラックからの荷下ろし作業を開始した。このとき,同クレーンのアウトリガーは中間張り出しの状態で,ジブの長さは最長の9.96m であった。まず,移動式クレーンの後方に止まったトラックの荷台上で,スチールファイバー(15kg×60袋,質量総計900kg,直方体状の荷)に繊維ベルトを掛けて玉掛けし,約5m つり上げてから,右旋回を開始した。ところが,つり荷が当該クレーンの左側後方に停車していたコンクリートポンプ車を越えたあたりで,移動式クレーンがバランスを崩して左側に転倒し,当該クレーンの左側に停車したトラックのそばでコンクリート打設準備のため鋼管を下ろしていた被災者が,倒れてきた同クレーンのジブに激突され死亡した。
なお,転倒直前においては,ジブの傾斜角度は約53度,作業半径は約6.0m であり,この場合の定格荷重は約0.58t であるので,明らかに過荷重の状態であった。また,A は現場監督でありながら,無資格で移動式クレーンを操作していた。