クレーンの災害事例
CR10011
事  例

鋼板積重ねのため天井クレーンの巻上げ作業中,ハッカーが引っ掛かり鋼板が滑落して被災者に激突する

[原因と対策]
業  種 金属製品製造業 機  種 天井クレーン
被  災 死亡 1名 現  象 つり荷、つり具が激突
 
あらまし  本災害は,鋼板の加工工場において,天井クレーンを用い,加工の終わった鋼板を梱包ラインから製品ヤードに搬送する作業中,製品ヤードにおいて,段積みした鋼板の上に,運んできた鋼板を下ろし,鋼板専用のつり具であるハッカーを鋼板から引抜いてクレーンの巻上げ操作を行ったところ,被災者と反対側のハッカーが完全に外れていなかったため,鋼板の片方が持ち上がった結果,鋼板が滑り落ち,滑り落ちた鋼板と背後にあった段積みされた鋼板との間に被災者の頭部が挟まれたものである。
 本災害の発生した場所は,鋼板を注文のサイズに切断して平坦な鋼板とする加工,加工した鋼板の梱包,及び梱包済み鋼板の製品ヤードへの搬送を行っている工場である。災害発生当日,被災者及び同僚の二人で,梱包の終わった鋼板を梱包ラインから製品ヤードに搬送する作業に従事していた。午後の作業が始まってまもなく,梱包ラインで仕上がった鋼板4束を段積みしたつり荷(長さ1,829mm,幅914mm,厚さ6mm の鋼板25枚の束,4束の総質量約8t)を天井クレーン(定格荷重20t)でつり上げ,製品ヤードに運ぶ作業に取り掛かった。玉掛けに用いたつり具は,鋼板の束をつり上げるための垂直方向の腕が長い4本のフックを有する専用のつり具(ハッカー)で,フック掛けは鋼板の両側で2名の作業者により実施するタイプのものであった。また,クレーンの操作は被災者が無線方式のリモコンで実施していた。災害発生時の作業は,製品ヤードに移動させたつり荷を,既に同サイズの鋼板を高さ70cmに段積みした上にさらに積上げるものであった。そのため,被災者が,クレーンを用いて巻下げによりつり荷(鋼板4束)を段積みされた鋼板の上に下ろし,被災者及び同僚が両側からハッカーを外してから巻上げの操作を行っていたところ,同僚側(被災者の反対側)のハッカーが外れておらず,その状態でクレーンフックを巻上げてしまったため,つり荷の鋼板の片方(被災者の反対側)が持ち上がって斜めになった。その結果,上側の3束が被災者側に滑り落ち,滑り落ちた鋼板と背後に段積みされていた鋼板製品との間に被災者の頭部が挟まれ,被災者が死亡した。
 
 
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