クレーンの災害事例
CR10031
事  例

橋梁建設現場で木製化粧板の荷下ろし作業中に,積載形トラッククレーンが転倒し,つり荷と運転台との間に挟まれる

[原因と対策]
業  種 土木工事業 機  種 積載形トラッククレーン
被  災 死亡 1名 現  象 機体、構造部分が折損、倒壊、転倒
 
あらまし  本災害は,橋梁建設上部工事現場の資材置き場兼加工場において,被災者が移動式クレーンを操作し,トラックの荷台から木製化粧板の束を荷下ろしするため,当該移動式クレーンを用いて化粧板の束をつり上げて旋回させていたところ,突然,移動式クレーンが転倒し,被災者が,つり荷と機体運転室部分との間に腹部を挟まれたものである。
  災害発生当日,午前8時頃被災者ら作業員は危険予知ミーティングを行った後,上記橋梁建設工事現場に移動,作業を開始した。当日の作業は鉄筋と型枠の組立てであり,被災者は型枠組立てを行った。
  正午頃,被災者は,現場責任者の指示を受け,型枠資材を作業現場に運ぶため,1人で作業現場近くの加工場に向かった。しかしながら,型枠資材の製作が遅れていたため加工場にて待機していたところ,別の事業所の作業者A が4トントラックで木製化粧板を搬入してきた。そのとき加工場にいた被災者以外の作業者はそれぞれ作業をしていたため,被災者が応対し,自分の判断で,移動式クレーンを用いて積荷を同加工場内に下ろすことにした。この作業では,まずA が同加工場内に置かれていた移動式クレーンの横にトラックを停車させ,トラック荷台上で玉掛けし,被災者が移動式クレーンの無線による操作を行うこととなった。木製化粧板(90×180×1.2cm の板)を100枚束ねたもの(総質量約1t)が二つトラックの荷台に前後に並べて載せてあった。まず,後ろ側の束にナイロンスリング2本で玉掛けしてつり上げ,左旋回して移動式クレーンの左前方に荷下ろしした。次いで,二つ目の木製化粧板を一つ目と同様の方法でつり上げ,今度は移動式クレーンの後方側から右旋回させ,先に下ろした一つ目の化粧板の束の横に下ろしていたところ,突然同移動式クレーンが左側に転倒し,被災者が,転倒した移動式クレーンの運転室部とつり荷との間に腹部を挟まれた。被災者は,病院に急送されたが死亡した。また,トラック荷台上で振れ防止のためつり荷を押さえていた作業者A は,事故発生時,荷台から地面に飛び降り,その際に胸部を打って負傷した。
  なお,移動式クレーンは整地されていない地面に直接設置されており,転倒方向に向かって2度程度傾斜していたほか,アウトリガーの張出しは転倒側でゼロ,反対側も35cm だけであり,アウトリガーの下に敷板等の措置はなされていなかった。また,被災者は小型移動式クレーン技能講習の資格は有しておらず,さらに作業者B も玉掛け技能講習の資格を有していなかった。
 
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