クレーンの災害事例
CR10051
事 例
積載形トラッククレーンを用いての作業中,地切り直後に荷が被災者に激突する
業 種
解体工事業
機 種
積載形トラッククレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷、つり具が激突
あらまし
本災害は,工場の木造休憩室等の解体工事に付帯して,積載形トラッククレーンを用いて,荷台に廃棄用の暖房機を積み込む作業において,暖房機に目通し1本つり状態で玉掛けし,巻上げ操作を行っていたところ,暖房機の下端が地切りと同時に跳ね上がり,さらに半時計方向に回転し,暖房機の近くに控えていた被災者に激突した。
被災者の所属していた事業場は,建築物等の解体業を営んでおり,災害発生当日は,事業主 A,被災者 Bおよび同僚作業者 Cの3名で,工業用制御バルブ製造工場の木造休憩室等の解体,跡地を駐車場として使用するために砕石を敷く作業を行うこととなった。午前中は,出先工場において,搬入した採石の敷設,廃棄暖房機からの必要部品の取外し及び暖房機の荷積み場所への移動等を実施した。午後になり, Aはまず積載形トラッククレーン(つり上げ荷重2 .93t。以下「移動式クレーン」という。)を移動させ,搬出する暖房機が左横になる位置に,左側(暖房機側)だけアウトリガーを張り出して設置した。次に,3名は暖房機の積込みに関する作業方法の打合わせを行った。その際,暖房機の形状・質量等から,暖房機を立てたまま玉掛けしてトラックの荷台に乗せるのは困難と判断されたため,一旦暖房機を移動式クレーンの荷台に立て掛け,それからワイヤロープ2本を用いて再度玉掛けをし直し,その状態で暖房機をつり上げながら横にして積み込むこととした。打合わせの後, Aはクレーンジブを動かしてフックを暖房機の向う側(移動式クレーンから見て)の位置まで移動させ,玉掛け用ワイヤロープを目通し1本つりの状態で暖房機の下から7分目あたりに掛けた。このとき,そのままでは同ワイヤロープがずり落ちるので, Cが周辺にあった棒で同ワイヤロープを押さえた。次いで, Aは移動式クレーンの左側操作レバーを握り,様子を見ながら少しずつ巻上げ操作を行い,ワイヤロープが張って暖房機が荷台に向けて傾いた時点で, Cに対して棒を外して離れるよう指示し, Bと Cは暖房機から少し離れた位置に退避した。この状態で,Aがさらに巻上げ操作を行ったところ,急に暖房機の下側が跳ね上がり,同時に同つり荷が振れながら半時計方向に回転し,被災者に激突した。被災者は直ぐに救急病院に運ばれたが翌日死亡した。
なお,同事業場では,使用した移動式クレーンの定期点検が適切に実施されておらず,また,事業場としての作業者の健康診断も実施されていなかった。