クレーンの災害事例
CR10061
事  例

移動式クレーンで仮設防護柵用支柱を引きずって移動作業中,つり荷とのり面の間に労働者が挟まれる

[原因と対策]
業  種 その他建設工事業 機  種 その他の移動式クレーン
被  災 死亡 1名 現  象 つり具、つり荷と床の物体による挟圧
 
あらまし  本災害は,落石防止擁壁建設のための国道災害防止工事現場において,仮設防護柵の撤去作業中,移動式クレーン仕様ドラグショベル(つり上げ荷重2.9t)を使用して,横倒しにした支柱(コンクリート四角柱と H形鋼を組み合わせたもの:長さ7 .33 m,質量2 .37t)を引きずって所定位置まで移動させようとしたところ,労働者が,つり荷の支柱とのり面のコンクリート壁との間で腹部を挟まれ死亡したものである。
 災害発生当日,現場では,被災者の所属する事業場の労働者7名で仮設防護柵撤去作業を行っていた。撤去作業は,防護柵の支柱から矢板を取り外した後,根本を掘削して同支柱を横倒しにし,移動式クレーン仕様で所定の場所に引きずって運ぶ手順で実施した。現場指揮は現場代理人 A,玉掛けは被災者 B,ドラグショベルの運転は移動式クレーン仕様時を含め Cが担当し,交通誘導,矢板の運搬及び搬出作業を他の4名が担当した。午前中2本の支柱の搬出を終え,昼休みを挟んで午後1時頃から,最後の3本目の支柱の撤去作業に取りかかった。
 災害発生時の作業では,上記の手順通り,まず Cがドラグショベルにて根本を掘削して支柱を倒し,次いで,被災者 Bが,玉掛け用ワイヤロープ1本の片方を,支柱に取り付けられた H形鋼の根本部分に掛け,他端をクレーンフックにかけ1本吊り状態で玉掛けした。その後, Bは当該支柱 H形鋼先端付近に移動し,運転手 Cに対して巻上げの合図をした。ところが, Cがその合図に従ってクレーン機能を有効にし,巻上げ操作を始めて間も無く,被災者 Bの叫び声が聞こえたため, Cがその方を見ると, Bが支柱 H形鋼とのり面のコンクリート壁(フリーフレーム)との間から出てきてうずくまるのが見えた。 Bは救急車で診療所に急送されたが同日中に死亡が確認された。
 なお,本件の作業においては,被災者 Bは勤続年数が3カ月と短く,玉掛けの資格も取得しておらず,またドラグショベルを運転した Cは移動式クレーンの運転資格を有していなかった。さらに, Aは現場撮影用のデジカメの電池消耗等の理由で午前11時半頃から現場を離れており,災害発生時には不在であった。
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