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あらまし |
本災害は,自動車部品製造工場において,自動プレスラインを担当していた作業員が,原料鋼コイルが無くなりかけたため,隣接したコイルヤードに行き,目的のコイルの手前に置かれた別のコイル(直径1 .69m,幅7 .3cm,質量1 ,137kg)を天井クレーン(つり上げ荷重2 .8t)で移動させるため玉掛け作業を行っていたところ,同コイルが手前に倒れ,その下敷きとなり死亡したものである。
災害発生当日,同工場のプレスラインでは,6名(被災者を含む4名の作業員がそれぞれ1台の自動プレスラインを担当し,他の2名がフォークリフト
の運転及び製品の点検作業をそれぞれ担当)が作業に従事していた。最も東側に設置された自動プレスラインでプレス機械を使用して自動車部品(排気パイプフランジ部分)を製造していた作業員(被災者)が,原材料のコイル材が残り少なくなったため,東側に隣接するコイルヤードに補充のためのコイルを取りに入った。被災者が,南北4列あるコイルヤードの一番北側の列で,西端から数えて2番目のコイルスタンドの西側に立て掛けてあった3本のコイルの西側に位置して,その3本のうちの一番手前のコイル(直径1 .69m,幅7 .3cm,質量1 ,137kg:目的のコイルではない)を天井クレーンにより他の場所に移動させようとした。そのため,最も手前のコイルとその後ろのコイルとの間にバールを使用して隙間をつくり,木製の楔(くさび)を挟んだ後,玉掛け用ワイヤロープ1本を一番手前のコイルの中央の穴に通していたところ,同コイルが被災者側に倒れ,下敷きとなった。別の作業員がクレーンを使用するためコイルヤードに行ったところ,コイルの下敷きになっている被災者を発見し,病院に急送されたものの,同日中に死亡した。
なお,つり荷の鋼コイルの一時的な置き場所であるコイルヤードのコイルスタンドには,取り扱うコイルが,鋼コイルで相当に質量が大きく,軸方向厚さがかなり薄いものもあって転倒による危険性が非常に高いにもかかわらず,適切な転倒防止対策がとられておらず,また,被災者も,災害発生時の作業において,コイルの転倒防止対策を何ら施していなかった。また,クレーン作業を行っていた被災者は,クレーン運転の資格及び玉掛け作業の資格を有していなかった。 |
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