クレーンの災害事例
CR10081
事 例
積載形トラッククレーンで荷下ろし作業中,トラックが傾き荷に激突される
業 種
陸上貨物運送業
機 種
積載形トラッククレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷、つり具が激突
あらまし
本災害は,建売住宅建築現場において,トラック積載形小型移動式クレーン(つり上げ荷重2 .93t・以下,「トラッククレーン」という。)を用いてプレカット材の梱包材(質量約1 .2t)をつり上げ,荷下ろし場所へ旋回しシブを伸ばしたところ当該トラックが傾き,荷台に積んでいた別のプレカット材の梱包材(質量約1 .3t)が崩壊し,つり荷の振れを押さえていた被災者に直撃したものである。
災害発生当日,木造2階建ての建売住宅3棟の建築工事を行う現場では,被災者 Aの所属する事業場を含む3社から作業者が合計7名入場し,朝8時から,トラックによる資材の搬入作業を行っていた。資材搬入作業において,最初に入場したトラッククレーンの運転手 Bと被災者 A(別のトラッククレーンの運転手)が協力し, Bが運転及び移動式クレーンの操作を, Aが玉掛け作業を担当していた。まず, Bがトラッククレーンを荷下ろしを行う Aの前に停車させ,左側(荷下ろし側)のアウトリガーを最大に張り出し,右側は張り出さずに,左右とも敷板を敷いて設置した。次に, Aが荷台の右側に積まれた荷の上部の梱包に玉掛けを行った。なお,玉掛け用具は両端アイ形繊維ロープ2本で,これらは工場での積み込みの際に既に1回分のつり荷(トラック荷台右側に上方二段に積まれたプレカット材の梱包材2個)の2箇所に目通しつりで掛けまわされていたものであった。
次に Bは, Aが玉掛け作業を完了しあおりから降りたのを目視で確認した後,つり荷の下端が荷台の左側に積んだ荷の上端より,20 cmほど高くなる位置まで巻上げ,右旋回してジブを荷下ろし場所に向け,つり荷下端が地面から80 cmほどの位置まで巻下げを行った。さらに,巻下げ操作を行いながら,同時に荷下ろし位置までジブを伸ばした。つり荷が荷下ろし位置の上方に達してから,巻下げを行おうとしたところ,トラッククレーンが荷下ろし側に少し傾いた(右のアウトリガーが5 cmほど浮く程度)瞬間,荷台の左側に積んだ梱包材が崩壊し,つり荷の振れ防止のため直接手でつり荷を押さえていた被災者の背中に激突した。同時に,崩壊した梱包材がつり荷に当たったためつり荷の最上段の梁の梱包材が滑り落ち,これがまた被災者の胸部に激突した。被災者は救急病院に運ばれたが一時間後に死亡が確認された。
なお,被災者の所属する事業場では,通常は,資材の搬入作業は通常は単独作業で実施しているものであるが,複数の搬入車両が出入するこの現場では,作業効率を上げるため,本件でのように別の車両の運転者が玉掛け者として自主的に協力し実施していたものである。