本災害は,発電機の更新工事において,ピットに発電機の排気ダクトを設置するため,つり上げ荷重 5tの天井クレーンを用いてつり上げていた排気ダクト(質量約1 .4t)のつり位置を変更するため,作業者がダクト上に乗って3点つりの1本であるダクト本体に巻き付けていたナイロンスリングを外したところ,ダクト本体が2本の玉掛け用ワイヤロープでつったフランジ部から抜け落ち,ピット内に立ち入っていた被災者が落下したダクト本体の下敷きとなって死亡したものである。
災害発生当日,朝礼の後午前9時頃から8名の作業者でピット内へのダクト据付け作業を行っていた。ピット内には現場代理人(A)及びつり荷の介錯及びアンカーボルト締付けのための作業者(被災者・B)が入っており,その他の6名の作業者(C~H)はピットの上での移動作業を担当していた。なお,ダクトの玉掛けは前日にこの6名のうちの3名が実施しており,その方法は,ダクトのフランジ(調整幅を有するルーズフランジと呼ばれる構造で,つることを想定した箇所ではない)の二つの穴にシャックルを介して2本のワイヤロープをつないでフックに掛け,ダクト本体にはナイロンスリングを巻いて目通しで絞り,その片方のアイにチェーンブロックを.いでフックに掛け,全体としては3点つり状態としていた。この状態で,ピット上において, Cが天井クレーンを用いてダクトを移動させ,チェーンブロックを回してダクトを水平(寝た)状態から縦に起こす作業を始めた。しかし,途中でダクトが起きなくなったため, Cは別の作業者 Dに指示してダクトに上らせ(安全帯,保護帽使用),チェーンブロックを緩めてナイロンスリングを外させた。ところが,その直後にダクトが2本のワイヤロープにてつられたフランジ部から抜け落ち,ピット内に落下した。丁度そのとき,西側のピット横穴に一旦退避していた被災者 Bが上空の作業状況を確認するためにピット内へ進入していたため,落下したダクトの下敷きとなった。 Bは直ちに病院に搬送されたが同日夜に死亡した。一方, Aは事故発生前に同ピット内に入り,据え付け位置の確認やごみの片付けなどをしていたが,ダクトがピット上に来たため北側にあるピットの横穴へ退避していたため被災せず,また,つり荷に乗っていた Dも無傷であった。
なお,ピット上の作業員の配置はクレーンの操作者である Cが決定していたが, Aはピット内での作業分担は決めておらず,ピットの中と外の作業者間の連絡調整も行われていなかった。また, Aが設計部門から事前に聞いていたダクト質量は,実際は1 .4tであるのに0 .7tと約半分の質量であり,重量表示も行われてはいなかった。 |