クレーンの災害事例
CR10101
事 例
天井クレーンでH鋼材をトレーラー荷台に積み込み作業中,つり荷と積荷との間に挟まれ死亡
業 種
陸上貨物取扱業
機 種
天井クレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり具、つり荷と床の物体による挟圧
あらまし
本災害は,鋼材の加工等を行う工場において,構内に設置されたつり上げ荷重15t(2フック型7.5t×2)の天井クレーンを用いて,トレーラートラック(以下トレーラーと呼ぶ)にH鋼材を積み込む作業中,既にトレーラー荷台に積み込まれたH鋼材の上で作業指示を行っていた被災者が,振れたつり荷と荷台のH鋼材との間に頭部を挟まれ死亡したものである。
災害発生当日の午後3時頃より,建設用鋼材の販売・加工を行う工場敷地内において,同工場の鋼材を注文主に送り届ける運送業者に所属する被災者Aの運転するトレーラーへのH鋼材の積込み作業が開始された。作業は,まず工場長と被災者が,積み込む荷の確認と荷を積む位置と順序について打ち合わせた後,工場長がクレーンの運転を行い,被災者はトレーラーの荷台に上がった。使用したクレーンは,長尺ものの運搬に利用する2つの巻き上げ装置(つり上げ荷重はともに7.5t)を持つトロリー式天井クレーンであり,2つのフックを同時に使用して玉掛けする構造のものである。次に,工場長は,H鋼材(断面600×200mm,質量1本当り約1t)5本を玉掛けし,無線コントローラーによる遠隔操作で,トレーラー荷台(右端及び中央)に積み込む作業を2回行った。その後,Aが玉掛けを,Bが天井クレーンの操作を担当し,最後に積み残した鋼材12本を積み込む作業に取り掛かった。ところが,トレーラー荷台の左端にその荷をつり下ろす途中で,Aが,荷の位置確認及び積み荷を安定させるため鋼材の列の間へのりん木の配置作業のため,つり荷の下降停止を要求したため,Bはつり荷底が荷台から10cmほどの高さの位置で下降を停止させた。その状態で,Aは最終的な荷の位置確認し,りん木を配置するために,作業を一旦中断したため,Bは現場を離れ鋼材置き場へ行き,別の作業を行った。その後,上記の作業を終えた被災者Aは,トレーラーの近くで清掃等の作業を行っていた作業者Cにクレーンの操作を依頼した。そこで,Cはトレーラーの左脇に置かれたタラップ(荷台に上がるためのもの)上に置かれた無線コントローラーを手に取り,Aの指示でつり上げられた12本の鋼材を荷台の左端に寄せて下ろした。しかし,Aが,下ろしたつり荷を荷台中央よりに置き直すように指示したため,Cがその指示に従って12本の鋼材を荷台中央へ寄せるために,クレーンの巻上げ操作を行ったところ,直後に,Aの叫び声が聞こえ,Cが確認をしに行ったところ,被災者Aの頭部が中央に積まれた5本の鋼材とつり荷との間に挟まれているのを発見したものである。
なお,本件において,クレーンの操作を行った作業者Cはクレーン運転士の資格を有していなかった。また,事故発生時クレーンを操作していたCの位置からは,積荷上にいた被災者の姿は見えない状態であった。