クレーンの災害事例
CR11011
事 例
玉掛け用ワイヤロープのアイがフックから外れ,落下の反動で跳ね上がった鉄筋に激突され死亡
業 種
建築用金属製品製造業
機 種
橋形クレーン
被 災
死亡 1名
現 象
つり荷、つり具が激突
あらまし
本災害は,鉄筋の加工を行う事業所において,橋形クレーンを使用し,鉄筋をトラック荷台に積み込む作業を行っていたところ,玉掛け用ワイヤロープのアイがクレーンフックから外れ,落下の反動で跳ね上がった鉄筋が,クレーンを操作していた被災者に激突し,死亡したものである。
災害発生当日の午後1時頃,被災者は,鉄筋の加工センターにおいて,翌日工事現場で使用する異形棒鋼(コの字型に加工した鉄筋:直径約3cm,全長約12m,質量約50kg)15本の束をトラックに積み込むため,橋形クレーン(つり上げ荷重2.8t)を使用し作業を開始した。本作業は通常は複数人で行っているものであるが,災害発生当日は被災者一人だけで行っていた。作業開始後,1時間程度で3束を積み込み,午後2時ころから4束目の積み込み作業を開始した。玉掛けの方法は,2本の玉掛け用ワイヤロープを異形棒鋼の片方の先端から約65cmの位置(曲げられた部分のほぼ中央位置)及び反対側先端から約3mの位置の2箇所で15本まとめて目通しで絞り,他方のアイをクレーンフックに掛ける2本つりであった(災害発生状況図参照)。この場合,つり荷の重心位置が支持力中心(二つのつり点の支持力の合力の作用位置)と非常に近かったためつり荷がいずれの方向にも回転しやすく,またつり荷は水平ではなく斜めになっている状態であった。なお,被災者は,地面から50cmほどに山積みされた異形棒鋼の上でクレーンの操作を行っていた。トラックの近くで別の作業を行っていた者がガシャンという大きな音がしたので振り返ってみると,クレーンのフックから玉掛け用ワイヤロープのアイの1つが外れ,異形棒鋼の束の一方が地面に落ち,異形棒鋼束は片側のみがつられている状態で,その直ぐ下に被災者が倒れていた(災害発生状況図参照)。災害の発生状況から,本件災害は,玉掛けの方法が不適切であったため,異形棒鋼の一方をつった玉掛け用ワイヤロープがフックから外れて落下し,反動でつられたままの側の端部が跳ね上がり,落下した側を支点として水平回転するように荷が振れ,被災者の胸部に激突したためと推測される。
なお,被災者はクレーンの運転及び玉掛け作業に関する資格は有していた。