クレーンの災害事例
CR11071
事 例
河川用大型ブロック設置工事において油圧ショベル兼用クレーンを用いての作業中,ブロックの下敷きとなり死亡する
業 種
その他建設工事業
機 種
その他の移動式クレーン
被 災
死亡 1名
現 象
積荷等荷の落下
あらまし
本災災害は,河川災害復旧工事現場において河川の護岸に設置するための大型ブロックをクレーンフックを備えたクレーン機能付きドラグ・ショベル(油圧ショベル兼用屈曲ジブ式移動式クレーンとも言う。以下,「油圧ショベル兼用クレーン」)により,仮置き場所から約45 m離れた設置箇所までの運搬を被災者が行っていたところ,複数個のブロックを設置した後,次に設置する予定の大型ブロックが運ばれてこないため,設置箇所で作業していた作業者が仮置き場所に確認に行ったところ,大型ブロックの下敷きになっている被災者を発見したものである。
本災害発生当日,当工事の作業指揮者と現場代理人,作業員2名の計4名で,河川護岸復旧用の大型ブロック(55 cm×45cm×124cm,質量400 kg)を仮置き場所から油圧ショベル兼用クレーン(つり上げ荷重2 .9t)を使用して,設置箇所まで運搬を行う作業を行っており,作業開始2日目であった。作業開始時,作業指揮者は仮置き場所での玉掛け(専用つり金具を使用)及びクレーン操作を行い,現場代理人及び作業員2名は設置箇所での玉外し及びブロック設置作業を行っていた。
なお,大型ブロックは,コンクリート製で,ブロック仮置き場所に一旦仮置きされるものであるが,仮置き方法等についての具体的な指示や,仮置きする際の現場代理人等の立会いもなく,大型ブロックを仮置きする場所は納入業者に任されていた。また,油圧ショベル兼用クレーンの操作者の行う作業は,専用つり金具を大型ブロックに玉掛けしてつり上げ,約45 m離れた設置箇所までつり荷走行により運搬し,現場で玉外しをしてもらい,ブロックを下ろした後,再びブロック仮置き場所に戻るのを繰り返し作業であった。
作業開始から1時間ほど経過した時点で,被災者が現場に到着したため,作業指揮者は,仮置き場所における玉掛け及びクレーン操作を被災者に行わせることとし,作業指揮者自身はブロック設置場所での玉外し及びブロック設置作業に加わった。
作業開始より9個目の大型ブロックの設置が完了し,次の大型ブロックの設置のために作業指揮者ら4名は設置箇所にて待機していたが,大型ブロックが運ばれてこないために,作業指揮者が仮置き場所へ様子を見に行ったところ,被災者が大型ブロックの下敷きになっていた。発見後すぐに応援を呼ぶとともに油圧ショベル兼用クレーンを使用して被災者が下敷きとなっていた大型ブロックを移動させて救出し,病院に搬送したものの,胸部圧迫による外傷性ショックにより既に死亡していた。
なお,大型ブロックの仮置き場所は高さ80 cmの既設の擁壁の上であり,被災者が下敷きとなった大型ブロックは,災害発生場所に3段積みされていた最上段のものと推測され,何らかの原因で倒壊したものと思われる。3段積みされた大型ブロックの高さは擁壁上で1 .65mであった。なお,ブロックの仮置きされていた既設擁壁の上面は水平であったが,大型ブロックは,交互の向きに積まれており,一部のブロックは後方の樹木に支えられている不安定な状態であった。
また,被災者は小型移動式クレーン運転技能講習,玉掛け技能講習及び車両系建設機械運転技能講習の修了者であったが,車両系建設機械の法令による資格を有する者による特定自主検査や月次検査は,実施されておらず,また移動式クレーンとしての定期自主検査も実施されていなかった。
災害発生時の直接の目撃者はいないが,発見時,油圧ショベル兼用クレーンのジブは大型ブロックを吊る方向を向いていなかったことから,大型ブロックをつり上げる作業中ではなかったものと推測され,被災者が何らかの目的で倒壊したブロック付近に接近した際に,大型ブロックが倒壊し下敷きになったものと推察できる。