クレーンの災害事例
CR11091
事 例
天井クレーンを用いて印刷機械の部品の補修作業中,作業台から墜落して死亡
業 種
金属製品製造業
機 種
天井クレーン
被 災
死亡 1名
現 象
作業床等から墜落
あらまし
本災害は,工場建屋内(東西約60m,南北約16m)において,大型印刷機の鋼製架台(東西約40m(一部46.5m),南北約12.5m,高さは1段目の高さ3.06m,2段目高さ3.65m,3段目高さ4.90m)を組み立て検査する作業において,補修部材の玉外し作業時に墜落して死亡したものである。
災害発生当日,ボルト穴の補修をする金属溶接事業者の社長Aと従業員2名(内1名が被災者)の3名と,鉄骨組立て業者2名(1名は現場責任者B)の合計5名の作業員は,架台の天板のネジ穴に不具合があったので,それを補修し,再度鉄骨架台上に組み付ける作業を行っていた。具体的な作業内容は,1段目の架台上に積み上げられた不具合のある天板を天井クレーン(つり上げ荷重7.65t,定格荷重7.5t,スパン14.24m)を使用して作業エリアに移動させ,ネジ穴の点検を行い,必要があれば電気ドリルでネジ穴を大きくし,天板の裏にナットを溶接し,再び天井クレーンを使用して鉄骨上まで運搬し組み付けるものであった。
なお,クレーン操作及び天板の玉掛け,玉外し作業は,Aが行い,玉掛け用具は,ナイロン製ベルトスリング2本(長さ:6.3m,アイ長さ30cm)を使用していた。
補修作業を行っていた作業エリアは鉄骨架台1段目の天板上であり,その高さは,3.06mであったが,南側の端には墜落防止の手すりが設けられていたが,北側の中央開口部には手すり等の墜落防止措置は取られていなかった。
数枚の補修組み付け作業終了後,3段目の近くで,Bがバールを使用して,天板を持ちあげ,ベルトスリングを抜き取ろうとしていたが,ベルトスリングが天板と鉄骨に挟まれ,思うように取り除くことが出来なかった。そのため,被災者は,Bを手伝おうとし,Bの方に歩み寄ろうとしたため,Bは被災者に数度,止めるように促したが,被災者は聞き入れず,バールを手に取り天板付近の鉄骨に移動し,バールで天板を持ち上げようとした。次の瞬間,被災者は,バランスを崩し,4.90mの高さの天板上から真下に墜落した。
なお,Aは玉掛け技能講習修了者ではあるが,つり上げ荷重5t以上のクレーンの運転に必要な免許は保有しておらず,現場ではクレーン運転についての資格保有者は誰もいなかった。さらに,補修作業についての具体的指示のみで,作業手順及び注意点等の安全面における手順は定められていなかった。また,KY活動,安全管理についてのミーティング等についても定期的に実施されていなかった。