クレーンの災害事例
CR11101
事  例

工事用エレベーターのカウンターウェイトとマストの間に労働者が挟まれ死亡

[原因と対策]
業  種 建設業 機  種 エレベーター
被  災 死亡 1名 現  象 その他の挟圧
 
あらまし  本災害は,高層ビル建設現場において,躯体の床中央部に設けられた開口部(3m×10m四方)に設置された工事用ラック式エレベーター(積載荷重2.0t,定格速度0.83m/s)が運転中に,被災労働者が昇降路内に立ち入ったため,カウンターウェイトとガイドレール支持塔(以下「マスト」と称す)との間に挟まれ死亡したものである。
 災害当日,鉄骨工事の溶接作業を請負うX産業からは溶接施工管理者である被災労働者Aのみが入場し,翌日から着手予定であった14階部分の溶接工事の準備作業として,クレーンで14階床に揚重された溶接ユニットの電源を13階の分電盤に配線する作業等を行い午前中の作業を終えた。休憩をはさんで,午後の作業を開始した。別の作業を行っていた請負業者の現場代理人Bは,その後12階のエレベーター前に設置された分電盤の漏電チェックを行った後,エレベーター入口前を歩いていると,2,3回異音がしたので,その方向を見たところエレベーターのマストとカウンターウェイトの間に挟まっているAを発見した。この時,エレベーター搬器は1階に着床した状態であった。
 エレベーターの運転手は,運転の業務のみを行う専属運転手であるが,災害発生直前には,10階で台車を積み1階への下降運転を行っており,1階に着き台車を下ろした時点で,災害発生による運転停止を指示された。この運転者によると運転中の異常は特に感じず,始業時の点検においても異常はなかったとのことであった。
 なお,本エレベーターは,マストが2本のタイプの工事用ラック式エレベーターであり,建設中のビル躯体中央部の2階から最上階までの各階床の長方形開口部に設置され,開口部の両サイドにマストが配置され,そのマストにラックと搬器(内法寸法;間口:約4.7m,奥行:約2m,高さ:2.3m)のガイドレールが取り付けられているものであった。開口部4辺の床先には高さ2.5mの養生金網が設置されており,さらにその上(梁までの間)には養生ネットが張られていた。なお,長手方向の1辺にはエレベーターの出入口扉(蛇腹式;間口約6m)が設けられており,カウンターウェイトは,搬器の上部に片方の尻手を緊結したワイヤロープがマスト頂部のトップシーブを介して搬器とは反対側のマスト側面につるべ式につり下げられていた(両サイドのマスト共対象に設置)。昇降路内には,エレベーター設備のほか,1階から各階工事で使用するための溶接用炭酸ガス配管,コンクリート圧送管,電気幹線,給水管,排水管が垂直配管・配線してあった。
 災害発生時,11階の養生金網(幅;約1m,高さ;0.9m)の一枚が外され,横に放置された状態になっており,11階の床には,溶接に使用する炭酸ガスホースが巻かれた状態で置かれており,凸部ソケット付き端部が養生金網の上部から昇降路内に入れられていた。さらに,昇降路内の11階上部には,13階から来た炭酸ガスホースの凹部ソケット付き端部がつり下がっている状態になっていた。災害発生時は単独作業中であり,作業内容を見たものはいなかったが,これらのことより,翌日の作業に備えて,被災者Aは金網内側のエレベーター昇降路内に立ち入り,溶接に用いる炭酸ガスホースの接続作業を行っていたところ被災したものと推測される。
cr04051.gif
 
 
[ホーム]