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あらまし |
災害発生当日,造船所において底引綱漁船の塗装作業をするために,3名の作業者が従事し,作業者Aは塗装作業の指揮とクレーンの合図を,作業者Bは直接塗装作業を,作業者Cはクレーンの運転を分担した.
塗装作業は,先ず左舷船首から船尾方向ヘ,次に右舷船首から船尾方向へ向かって塗装するものであり,ドックに設置された固定式塔型ジブクレーン(つり上げ荷重10.2t,ジブ長さ28.7m)を使用し,これに移動用つり足場(通称ゴンドラと呼ばれているもので,長さ10.2m,幅1.03m,手すり高さ1.1mの鋼製品で重量約1.4t)をワイヤロープ4本づりでクレーンフックにつり下げ,このゴンドラに作業者が搭乗して行うものであった.
ゴンドラには作業者A,Bが乗り込んで作業していたが,左舷側の塗装が終了したため一旦ゴンドラから地上に降りた.このときクレーン運転士Cは,退社時刻で作業を離れることとなったため,Aは他の作業者Dにクレーン運転を依頼し,ゴンドラを右舷側へ移動させようとした.
作業者Dは,ゴンドラを左舷から少し離して右旋回し,船台から約6mの高さまで巻上げ,ジブを伏せようとクレーン操作をしたとき,ジブの根元から約8.3mの部分が折れ曲がりゴンドラが落下した.このときゴンドラの下で合図をしていた作業者Aがその下敷きとなり圧死したものである.作業者Bは離れて合図を見ていたので難をまぬがれた.
ジブが折れ曲がった箇所は以前,左舷側での作業中に障害物をかわすためジブを起こすとき,リミットスイッチが働かずに,ジブがクレーンのアウトマストに激突し弓状の曲がりが生じていたところであった.
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