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あらまし |
A社は,店舗新築工事に使用する屋根材(鉄板ロール)とその加工を行うための成形機を材料工場から工事現場へ運搬することを請け負った.災害発生当日の午前6時頃,A社の従業員で被災者でもあるBが10t積みトラックに成形機を載せ現場に到着した.
また,これらの荷降ろしを行うため,A社のCはつり上げ荷重20tのトラッククレーンを運転して同時刻頃現場に到着した.Cは成形機と別途搬送されてきた屋根材をトラッククレーンで荷降ろしした後,当該クレーンを使用して屋根材の加工作業を補助することになった.Bは,他の業務を行うため現場を離れた.
屋根材の加工作業は午前中に終了する予定であったが,材料の鉄板ロ一ルが不足していることが判明したため,急遽,追加搬入することとなった.
Bは,午後になって成形機を搬出するため現場に戻ったが,加工作業が終了していなかったため現場で待機することにした.午後3時頃,追加の屋根材が到着して直ちに加工作業を再開したので,Bも成形が終了した屋根材を積み上げる作業を手伝った.
午後4時頃加工作業が終了したため,Cは加工後の屋根材を建築中の梁材の上に上げるため,トラッククレーンの主巻フックにつり具を掛けた後,運転席に入って主巻の巻き上げ操作を行った.この時,運転席後部でドラムが空回転する音がするとともに,同時に補巻フックが急降下し,下にいたBの頭部に激突した.
災害発生時のトラッククレーンの状況は次のとおりである.
- ジブの傾斜角は72度,ジブ先端の高さは地上から約30m,作業半径は9mであった.
- 補巻フックは自重65kgで,過巻防止用リング付近まで巻き上げられており,荷はつられていなかった.
- クラッチは主巻用と補巻用とが別々に設けられており,補巻用クラッチは「断」になっていた.
- 補巻用ブレーキはかかと側を踏むとロックされ,つま先側を踏むと解除される.長時間使用しないときには,さらにロックストッパーがあるが,使用されていなかった.
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