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あらまし |
災害は,農業用水路建設工事の現場で発生したものである.同水路は,経路の途中にある河川を水管橋により越える設計になっており,災害発生当日は,同水管橋の基礎が設置される箇所へのパイルの打設のため,トラックで運ばれてきたパイル等の荷降ろしを行っていた.
当該現場ではつり上げ荷重37tのクローラクレーン(以下「クレーン」という.)を1台使用しており,荷の運搬に使用するとともに,杭打機としても使用していた.
午前中は,1台目のトラックで運搬されてきたパイルをクレーンにより所定の置場に降ろし,午後は午前中と同様の作業で2台目のトラックからパイルを降ろした.3台目のトラックはH型鋼を運搬して来ることになっており,そのH型鋼はパイル置場とは離れた場所を置場に予定していたため,2台目のトラツクが去った後,H型鋼の荷降ろしに備えてクレーンをH型鋼置場へ移動させることとした.
これらの作業場所は,水管橋工事のために造成された取り付け道路の末端にある資材置場であり,舗装 はされておらず,地盤も軟弱であったことから,トラックの停止位置に車輪のめり込み防止のための鉄板(1.5m×3m,重量約430kg)が2枚敷いてあった.
クレーン運転士はクレーンをH型鋼置場の方に移動させるため,クレーンの向きを変えようとこの鉄板のある位置で車体を右旋回させたところ,鉄板の角がクレーン左側の履帯(クローラ)の前端のシューとシューの間に食い込んでしまった.このためクレーン運転士は左側の履帯だけを後進させることにした.
被災者は,玉掛け作業者として現場に来ていたが,このときはクレーンの誘導を行っており,鉄板がシューに挟まったのを見て,鉄板の上に乗って,鉄板がうまく外れるかどうかを見ていた.クレーン運転士は鉄板を外そうと左側履帯の後進操作をしたが,鉄板は外れず,他方の端がシューに挟まったまま履帯に持ち上げられるような形で宙に浮いた.
鉄板の上に乗っていた被災者は,驚いて鉄板の上から地上に飛び降りたがその場に転倒してしまった.クレーン運転士は鉄板が跳ね上がったのを見て,あわてて履帯の後進を停止させたが,その衝撃により今度は鉄板が履帯から外れ,倒れた被災者の上に落ち,被災者は内臓破裂で死亡した.
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