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あらまし |
災害が発生した場所は一般産業機械を製造する工場であり,被災者はその構内下請事業場の労働者であった.
災害発生当日,被災者Aは午前中にステンレス製の円筒形のカゴを製作し,午後になって,上司から搬送用コンベアの製作に取りかかるよう指示されたが,その前に作業場所に置いてある歪補正用の重錘を所定の位置にかたづけ,付近を整理整頓するよう併せて指示されていた.
作業場所の床にあった重錘は,縦45cm,横35cm,高さ50cm,重さ500kgである.床はコンクリートでその上にH鋼が固定され,H鋼の上に鉄板が敷かれている部分があり,その段差は約13cm,重錘はコンクリート部分に置かれていた.
Aは,工場内に設置されている床上操作式天井クレーン(つり上げ荷重5.1t)のフックに,図1のようなつりチェーン(一端にフックを取付けたチェーン2本をリングに付けたもの)のリングを掛け,当該つりチェーンの1本のフックを重錘に取り付けられたリングに掛けて移動させようとした.
ところがこの時,つりチェーンの他方のチェーンのフックが,床面のH鋼に引っ掛かっており,Aはこれに気づかないまま,クレーンを巻き上げたため,H鋼に引っ掛かっていた方のチェーンが緊張し,さらにフックが変形してH鋼から外れ,フックがはね上がって,Aの胸部に激突した(図1,2参照).
使用されたクレーンの巻上げ速度は6m/minで,巻き上げ運動に異常はなく,ペンダントスイッチの押ボタンにも異常はなかった.
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