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あらまし |
災害が発生したのは,ビル建築を行っている工事現場である.災害発生当日は鉄骨の建方作業を行うこととなっていた.
鉄骨の建方は,鉄骨工事を請け負った1次下請けの責任者A,建方作業を請け負った2次下請けの作業員B,C(被災者),D,及び移動式クレーンの運転士Eの5名で作業を行うこととなり,当日の朝,AからBに対し,鉄骨はトラック5台で搬入されること,柱部分が先に到着するので順次建方工事を行うことなどを指示した.
作業員の配置は,鉄骨がトラックで運ばれてきたときは,Aがトラックの荷台上で玉掛けをし,BとCが荷下ろし場所で荷の受け取りをする,トラックの運転者はAの補助をする,また,鉄骨の建方をするときは,B,C,Dが玉掛け等の作業をする,というものであった.鉄骨のつり上げは何れもラフテレーンクレーン(つり上げ荷重20t)を用い,運転はEが行うことになっていた.
朝から作業を始め,トラックの到着ごとに先ずトラックから荷下ろしを行い,次のトラックの到着までの間に柱の建方などの作業を進めていた.4台目のトラックが昼前に到着したので,それまでと同様にAがトラック運転者に手伝わせながら荷台上において玉掛けを行い,BとCが荷置き場所で玉外しをするということで荷下ろしを始めた.荷は鉄骨の梁材で,寸法が幅30cm×たて40cm,長さ6m~8m,重量600~700kgのH型鋼であり,それぞれ数個所にH鋼の幅からはみだしたプレートが溶接されている.この22本が荷台上に3段(上から8本,7本,7本)に積まれていた.
Aらは荷台の走行方向に向かって左側のH型鋼から荷下ろしを始めた.14本目のH型鋼(右から2本目)に玉掛けワイヤロープを掛けようとしたところ,15本目のH型鋼と密着していたため,14本目を左に少しずらし,ワイヤロープを掛けた.Aは玉掛けの補助をしていたトラック運転者を退避させ,自らも退避したのち移動式クレーンの運転士Eに巻き上げの合図をした.
その合図によりEが巻き上げを行ったところ,つり荷のH型鋼に付けられたプレートが15本目のH型鋼に引っ掛ったため,15本目が荷台から落下し,トラック横にいたCがその下敷きとなつた.
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