クレーンの災害事例
CR93112
事  例

フックを巻き過ぎ後方に転倒

[あらまし]
業  種 土木工事業 機  種 クローラクレーン
被  災 軽傷 1名 現  象 機体、構造部分が折損、倒壊、転倒
原  因 本災害の原因としては,次のことが挙げられる.
  1. フックの巻過防止装置を切っていたこと.
    災害が発生する直前まで,矢板の打込作業を行っていたが,その振動でフックの巻過防止装置が作動するため,巻過防止装置のスイッチを切っていた.
  2. エンジンをかけたまま,運転席を離れたこと.
    そのために,運転席を離れるとき,補巻きフックの巻上げレバーに衣服が引っ掛かり,巻上げ状態となったものである.
  3. ジブの起伏制限装置がジブ起伏用巻上げドラムだけを停止させる構造であったこと.
    ジブ起伏装置の起伏制限装置は,機能していたが,ジブ起伏用巻上げドラムを停止させるだけで,フック用巻上げドラムも停止させる構造となっていなかった.
対  策 移動式クレーンの転倒災害は,周辺で働いている労働者だけでなく,近隣の一般公衆を巻込む大きな災害となる可能性が高い.今回の災害も,橋の上にジブが落下しており,非常に危険な災害であった.
このような災害を防止するためには,次のような対策が必要である.
  1. フックの巻過防止装置等の安全装置は,常に,有効に機能するようにしておくこと.
  2. 運転席を離れる際には,エンジンを停止するとともに,ブレーキを確実にかけておくこと.
    クレーン等安全規則では,荷をつった状態のまま運転席から離れることを禁止しているが,荷をつっていない状態でも,不意の作動などを防ぐためには,エンジンの停止,ブレーキ等の実施は必要な事項である.
  3. ジブの起伏制限装置には,ジブの起伏に関係する全ての作動を停止する機能を持たせること.
    フックの巻過防止装置を切っている場合等であっても,巻過防止装置に異常があることを想定して,起伏制限装置を設計することが望ましい.
    今回の災害においても,起伏制限装置が,フック用巻上げドラムも停止させる構造となっていれば防ぐことができたものである.
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