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あらまし |
災害は,造船所のドックに設置された橋形クレーン(つり上げ荷重主巻30t,補巻5t)で発生したもので,修理直後のクレーンのフックが,巻過ぎにより,落下したものである.
災害発生当日の朝8時,クレーンの点検担当者であるAは,その橋形クレーンの始業点検を実施したところ,クレーン運転室内にある共用保護盤の振動音が異常に大きいことを発見したため,社内の電気保安部門に修理を依頼した.
電気保安要員Bは,係長の指示を受け,その橋形クレーンの共用保護盤内にある電気配線を,一人で約30分かけて修理・調整したところ,共用保護盤の振動音が治まったため,修理が終了したことをAに報告した.
報告を受けたAは,クレーン運転士Cに10時から,ドック内の資材の整理のためのクレーンの運転を指示したが,クレーンの電気関係を修理したことについては,特に引き継ぎを行わなかった.
クレーンに乗ったクレーン運転士Cは,足場板5枚を補巻でつり上げ移動するため,玉掛け者Dの合図で補巻フックを巻下げていた.その際,同時に作業の障害となる主巻フックを巻き上げていたが,補巻フックの巻下げに気を取られ,主巻フックが巻過ぎになっていることに気付かなかったため,巻上げ用ワイヤロープ(直径20mm)が切断し,主巻フック(重量700kg)が落下,主巻フックに掛けられていた玉掛け用フイヤロープがクレーンの下で玉掛けの準備をしていた玉掛け者Dに当たったものである.
なお,この橋形クレーンには,ねじ形リミットスイッチ,重錘形リミットスイッチの2つの巻過防止装置が備えられており,信頼性は高いものであった.
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