クレーンの災害事例
CR96041
事  例

つり上げた鋼材に激突される

[原因と対策]
業  種 建設業 機  種 クローラクレーン
被  災 死亡 1名 現  象 つり荷、つり具が激突
 
あらまし 道路橋の橋脚建設工事において,広さ約28m×10m,深さ約9mにわたり掘削した
掘削部の周囲に鋼製の矢板を打ち込み,上下四段に差し渡したH鋼の土止め支保工で支持していたが,橋脚下部の建設が終了したため,その土止め支保工の解体作業をしているときに災害が発生した.
解体作業は,ボルト締めにより組立てられ上下四段に差し渡されたH鋼の支保工を取り外し,移動式クレーン(つり上げ荷重35t,クローラクレーン)で搬出するものであったが,橋脚内を貫通している部分のH鋼はそのまま残しておき,橋脚から飛び出した部分を切断して取り除くことになっていた.
災害発生当日は,クレーン運転士Aがクローラクレーンの運転,作業者B,CがH鋼の解体作業及びクレーンヘの合図等,被災者DがH鋼の玉掛け及び鋼材の切断作業をするという分担で,最下段の支保工の解体搬出を終わり,引き続いてその支保工で土止め用矢板を押さえているH鋼材(腹起こし)の解体をしていたが,そのH鋼はそれまでのものよりもやや長尺(長さ約6メートル)であり,つり上げるとき上部の支保工に接触するおそれがあったため,そのままつり出すことができなかった.
そこで,H鋼の玉掛けに両端アイのワイヤロープの片側に鋼材を保持するための金具を取り付けたものを使用し,先ず,Dが取り外すH鋼の中間部に金具を取り付けて玉掛けし,クローラクレーンで支持しながらDとCが両端のボルトを外した後,Cの合図によりクレーンを動かして底の床面に下ろした.
次に,一旦クレーンのフックから玉掛けワイヤロープを外し,クレーンフックを横の空間部に入れ直し,再度玉掛けワイヤロープをフックにかけてH鋼をつり上げ,次の上部の支保工に当たるところまで横に移動させ,床部に下ろした.
さらに,H鋼に取り付けていた玉掛け用ワイヤロープの金具を外し,フックを隣の空間部から入れ直した.この空間部はH鋼を搬出できるだけの広さであり,DはH鋼材の端部から3分のl程のところに金具を取り付け,Cにクレーン運転士Aにつり上げの合図を送るよう指示した後,残っていた鋼材の切断を行うためその空間部の隅の方に向かった.
Cからつり上げの合図を受けたAが巻き上げ操作を行ったところ,フックがH鋼の金具取付け部からずれたためH鋼が横に約2m振れ,溶断作業の準備をしていたDの頭部に激突した.
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