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あらまし |
災害は,自動車専用道路建設工事の一部として行われたトンネル建設現場において発生したものであるが,工事は工事区間を立坑掘削し,パイプルーフ工法によりずい道を建設するものであった.
地上から約20m掘削した立坑の底部に,鉄板等の資材を仮置きするとき底面コンクリートを傷つけないように「荷受け台」を設置することになったが,当該作業は工事を請負っている共同企業体の1次下請及び2次下請により行われていた.
災害発生当日は,被災者の所属する2次下請にあたる事業場の労働者A,Bの他1名の計3名が,H形鋼3本とその上に敷く鉄板6枚を資材置場からダンプトラックに積み込んで,立坑上部端まで運搬してきた.
この後3人はそれぞれA(被災者)が立坑上部端に設置されたクローラクレーン(つり上げ荷重4.87t)の運転に従事し,他の2人は立坑底部での据え付け作業に従事した.ところが,クローラクレーンの運転席からは立坑底部を見通すことができなかったため,立坑上部端で1次下請会社の労働者Cが玉掛け作業と合図を行っていた.
午前中は,H形鋼3本を立坑底部に据え付けたところで作業が終了し,午後からの作業は鉄板(重量805kg)6枚を1枚ずつクローラクレーンでつり降ろし,立坑底部のH形鋼の上に敷くものであった.当初は,鉄板(重量497kg)8枚を敷く予定であったが,6枚に変更されていた.
Cが鉄板を玉掛けし,その合図によりAがクローラクレーンで立坑底部から約2mの高さの位置まで荷を降ろしたが,立坑底部で据え付け作業を担当していたBは鉄板をH形鋼の真上に置くめジブを伸ばすようAに合図した.鉄板が所定の位置にきたため,Bは「伸長停止」の合図を送ったが,ジブはそのまま伸び続け,その直後にクローラクレーンが傾いて転倒し,フックにつり下げられていたの鉄板は立坑底部に落下した.
被災者Aは転倒したクローラクレーンの運転席のフレームと立坑上部端に設置されていた墜落防止用の手すりとの間にはさまれ死亡した.
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