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あらまし |
事故は地下1階,地上14階建のマンション新築工事現場において発生した.事故発生当日には,4階部までの鉄骨組立作業が終了しており,当日は,4階から上の4階分の鉄骨柱,はり部分等を組み立てる予定であった.
組立作業には2次下請企業のN組の労働者とK産業の労働者が従事した.N組のA,B,Cの3名は,鉄骨の玉掛け作業及びクライミング式ジブクレーン(つり上げ荷重6.3t)で運ばれる鉄骨を所定の位置に誘導しボルトで仮締めをする作業に従事し,K産業の労働者1名は,ジブクレーンの運転に従事していた.
当日組み立てる予定の鉄骨(柱4本,はり16本)は,朝方トラックにより現場に搬入され,一旦現場の敷地内に仮置きした後,クレーンを使って4階スラブ上の鉄骨組立箇所に近い場所に荷揚げされていたが,2本目の鉄骨柱を組立て後,4階スラブ上の鉄骨柱(重量1.7t)をA(玉掛技能講習修了者)が両端アイ付のワイヤロープとシャックル2本を用いて玉掛けした.
3本目の鉄骨柱組立ては,ジブクレーンにより鉄骨をつり上げ,Aの誘導により4階部の取り付け位置へ運搬した.所定位置で労働者A,Bが床の骨材に鉄骨柱をはめ込み,取付用のボルト穴に左右8個の仮止め用ボルトを差し込み仮止めをした.
仮ボルトを取り付けた後,鉄骨柱が傾いていることがわかったため,この傾きをジブクレーンで修正することを試みた.最初に西方向への傾きを修正するため,鉄骨柱の真上にジブを旋回させ,ワイヤロープを巻き上げる力を利用して鉄骨先端部の傾きを修正した.次に,北方向の傾きを修正するため,巻き上げ用ワイヤロープを緊張したままジブを右旋回方向に回転させ,ジブの回転力を利用して鉄骨柱の先端を南方向に横引きしようと試みたが,横方向の力にジブが耐え切れなくなってジブの中ほどから折損した.
当該ジブクレーンの過負荷防止装置は働いていたが,水平方向の負荷を感知することができず同装置は作動しなかった.
災害発生時のジブの長さは30m,作業半径24.3mであり,このときの定格荷重は2.8tであった.
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