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あらまし |
製鉄所構内の製品倉庫において,鋼板コイルを出荷するため天井クレーン(つり上げ荷重36トン)を当該コイルのある場所へ移動させ,フックを降下させるつもりで操作したところ,フックが突然巻き上がりその上部がクラブの下面に激突し,巻上げ用ワイヤロープが切断してつり具が落下した.
災害発生当日の作業は,製鉄所の熱間・冷間圧延工場で製造された鋼板コイルが仮置きされている倉庫から,クレーンによりコイルを出荷したり,移動させるものであった.
天井クレーンの運転士Aは,同クレーンの運転室に搭乗し作業開始前の点検を実施した後,鋼板コイルの受入れ,出荷等のための作業を行ったがこれらの作業が終了したので,クレーンを一旦停止させて次の作業指示を受けるまで運転室内で待機していた.
その後,しばらくして出荷指示がきたので,Aは作業を開始するため天井クレーンのフックに掛けてあるつり具のコイルリフターを出荷するコイルの上へ移動させ,巻き下げコントローラを全ノッチに入れるとともに,つり上げるコイルが間違いないかどうかを運転室の端末画面で確認していたところ,クレーンのつり具が巻き上がっていることに気付いたため,コントローラを再確認し急いでOFFの位置に戻した.と同時に,つり具の上面とクラブの下面が激突し,更に巻き上がったため,巻上げ用ワイヤロープが切断して,つり具のコイルリフターがコイル上に落下した.幸いにもクレーンの下で作業している者がいなかったので人的災害はなかった.
当該クレーンには,安全装置である巻過防止装置としてカム式リミットスイッチが取り付けられており,当該装置はフックシーブとクラブの下面が接触して巻上げ用ワイヤロープを巻き切ることを防ぐため,常用時の上限として約1m,さらに非常時の上限として約80~90cmの間隔になると作動するように2段階に設定されていたが,このとき当該装置は作動しなかった.
なお,当該クレーンは昭和46年に製造され,年次検査,月例検査は実施済であった.
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