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あらまし |
この災害は型打鍛造業を営む工場において発生したものである.クレーン運転士Aは,その日の作業が終了したので,無線操縦方式によるクラブトロリ式天井クレーン(つり上げ荷重22.35t)の主巻用フックブロック(重さ350kg)を,所定の位置に巻上げておくために巻上げた.この巻上げは,通常,適当な高さにまで巻上げて途中で止めるのではなく,巻過防止装置が作動するまで巻上げて止める方法を採っていたので,この時も当然,巻過防止装置が働いてフックブロックは巻上げが停止するものと思っていたが,停止しないまま直接クラブに当たってしまい,ワイヤロープが切断してフックブロックが落下した.そのため,クレーンの下に設置されたプレスの近くで型の取り付け作業をしていた作業者2名は,落下してきたフックブロックになぎ倒された.なお,この巻過防止装置はフックブロックが上昇して重錘を押し上げると,装置内にある操作レバーの重錘の重さにより,軸と一体になっているカムが回転してカムスイッチを押し下げ,操作回路の接点が開いて巻上げが停止するという構造の重錘式巻過防止装置であった.災害発生後,重錘レバーを操作してカムスイッチの作動状態を確認したところ,何回かに1回は軸と一体となって動くはずのカムが回転せず,カムスイッチを押し下げなくなってスイッチが切れない状態になることが判明した.また,カムと軸の固定は直径部にピンを挿入し,上面から溶接で止めてあったが,災害発生後スイッチのケース内にピンの一部が破断して落ちているのが発見された.
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