クレーンの災害事例
CR98031
事  例

移動式クレーンのジブが座屈

[原因と対策]
業  種 建設業 機  種 ホイールクレーン
被  災 なし物損のみ 現  象 機体、構造部分が折損、倒壊、転倒
 
あらまし この災害は広告塔の看板撤去工事において,4本の鉄柱で組み立てられた広告塔の看板を2台の移動式クレーンにより共づりした状態のまま,鉄柱の下部をガス溶断したのち,地上におろす作業をしていたところ,移動式クレーンのジブが座屈したものである.
災害発生当日の作業は道路脇に建てられた広告塔を撤去するため,ラフテレーンクレーン(つり上げ荷重45t,以下「45tクレーン」という.)を用いて玉掛けし,看板を支えている4本の円柱状の鉄柱の基礎部分をガス溶断したのち,横倒しにするものであった.
最初に,看板上部の四隅に玉掛けワイヤロープを掛け,4点づりとしてワイヤロープを緊張させ,広告塔の鉄柱をコンクリート基礎の根元で溶断した.
玉掛け作業者の合図により,45tクレーンの巻上げ操作が行われたが,つり荷は全く動かず過負荷防止装置の警報ブザーが鳴り,表示盤に黄色の表示が出た.そのため,鉄柱が完全に溶断されていないものと判断し,鉄柱のガス溶断を再度行ってつり上げてみたが,この時も全く動かなかった.
このため,運転士は現場監督らと協議し,さらにもう1台のラフテレーンクレーン(つり上げ荷重25t,以下「25tクレーン」という.)を現場に呼び,2台のクレーンで広告塔を共づりし,横倒しするという作業手順の打ち合わせを行った.
45tクレーンを広告塔の南側に,25tクレーンを東側に配置して玉掛けを行い,玉掛け者の合図により約30cmつり上げ,さらに,45tクレーンのジブを時計回りに約2m旋回させたところ,つり荷はそのまま自然に旋回方向へ動き始めた.
25tクレーンの運転士は,このまま旋回運動が進むと過負荷防止装置が働いて荷が急停止し,バランスを失い大惨事になると思い,当該装置のスイッチを切ったのちジブ角度を上げながら少しずつ巻下げを行った.
さらに,合図者の巻下げの合図により徐々に下げ始めたとき,「ゴツン」という音がして前のめりになるような格好となり,2台のクレーンのジブが同時にそれぞれ座屈した.
このときの45tクレーンは,作業半径10m,ジブ傾斜角63゜,定格荷重10tであり,2段目のジブが座屈し,25tクレーンは作業半径8.5m,ジブ傾斜角73゜,定格荷重6.4tであり3段目のジブが座屈していた.
なお,つり荷である広告塔の重量は23tであった.
 
 
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