|
あらまし |
本災害は,ケーブルクレーン(つり上げ荷重5t)により資材を運搬するための玉掛けを行うため,被災作業者がフックに掛けた荷づり用のナイロンスリングを握っていたところ,不意にケーブルクレーンの巻き上げと横行が同時に行われたため,手を離す間もなくつり上げられ,しばらく運ばれたのち力尽きて墜落したものである.
災害のあった作業は,足場等の運搬を請け負ったA社がその協力会社であり被災者の所属するB社と共同で行うもので,ダム建設用資材を運ぶためのケーブルクレーンはダム建設工事を請け負ったC社が設け,運転はC社,合図はその協力会社であるD社の作業者が行っていた.このため,A社とC社との間ではケーブルクレーンの賃貸契約がなされ,作業内容等についても確認がされていた.
災害発生当日は,午前8時過ぎから荷積み場所と荷卸し場所の二手に分かれてトラックにより持ち込まれてきた資材の運搬作業に取りかかった
荷の積み込み場所では,B社所属の被災者と同僚の2人がトラックの荷台に乗って玉掛け作業を行い,その近くではD社の合図者が無線電話により約300m離れた運転室の運転士に合図していた.第3回目の積み込みの際,被災者が地切りした荷の状態を確認するためナイロンスリングに両手を掛けながら見ていた.
たまたまその時,A社から合図者あてに作業の進行状況についての問い合わせが無線で入っため,状況説明をしていたところ,それを同一の周波数を使った別の無線機で聞いていた運転士が運転開始の合図と勘違いし,巻き上げと同時に横行を開始した.このとき,被災者はつり荷から押される形となり,のけぞる格好となったため,ナイロンスリングから手を離すことができず,荷と共に吊られながら運ばれていった.
このため,合図者が運転士に運転を止めて引き戻すよう指示したところ,ケーブルクレーンを急停止させたため荷が大きく揺れ,被災者はナイロンスリングをつかんでいることができずに墜落した.
|
|