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あらまし |
被災者の所属するA社は,鉄くず等の仕入れ,販売等を行う卸売業を営む事業場であるが,本災害はA社が鋼材片等の回収を請け負っているB社の工場内において発生した.
災害発生当日,被災者はA社に出勤した後,前日から指示を受けていたB社におけるスクラップ回収を行うためトレーラーを運転して単独でB社に赴き,到着後直ちにバケットに入ったスクラップをトレーラーに積み込む作業にとりかかった.
積み込み作業は,工場内に設置された無線操作方式の天井クレーン(つり上げ荷重2.8t)を使用して本人が一人で作業していたが,作業手順はバケットの上部4カ所に取り付けられたフックにそれぞれ玉掛けワイヤロープを掛けてつり上げ,一旦,トレーラーの荷台に下ろしたうえ,上部フックのうち前部(向こう側)2カ所のワイヤロープを外し,これをバケット後部(手前側)の下部に設けられた2つのフックに掛け直して,さらにつり上げるとバケットの中からスクラップが出てくるということになっていた.
被災者は,スクラップの入ったバケットをつり上げてトレーラーの荷台上に旋回させるまでは地上で無線操作していたが,バケットを一旦荷台に下ろすときはトレーラーのあおりが変形していて開閉できず,荷台の状況を下から確認することができなかったため,荷台上に移動して運転操作していた.
この作業を数回繰り返した後,次ぎに少し大きめのバケットを荷台の所定位置に下ろそうと荷台上から運転し,クレーンの巻き下げ操作と走行操作(手前側)を同時に行ったところ,突然バケットが大きく振れ,バケットと後方のあおりとの間に挟まれて死亡したものである.
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