|
あらまし |
本災害は,移動式クレーン(つり上げ荷重10t)を用いてトラックの荷台から荷をつり上げ旋回させようとしたところ,定格荷重を超える荷重がかかったため,機体が傾いてジブが製造中の焼却炉に接触して折れ曲がり,付近で作業をしていた被災者の上に倒れかかったものである.
災害が発生した事業場は業務用の焼却炉を製造しており,災害発生当日は移動式クレーンにより,製造中の焼却炉に重さ1tの扉を3枚取り付ける作業を行っていた.3枚の扉のうち2枚を取り付けた時点で,別の作業部門において調達した発電機(0.11t)がトラックで搬送されてきたため,その荷卸し作業を急きょ手伝うことになった.
玉掛作業者が荷台上の発電機に玉掛けし,オペレーターは移動式クレーンの位置を変えることなく扉取付作業を行った位置でそのまま作業に取りかかった.つり荷の発電機を約1mつり上げた後,右旋回を始めたところ,移動式クレーンが傾きだし製造中の別の焼却炉に2段目のジブが接触して曲がり,機体も右側30度まで傾斜した.
折れ曲がったジブは別の焼却炉の上で作業していた被災者に激突した.
災害発生時の移動式クレーンの状態は,作業半径が12m,ジブ長が18m,ジブ傾斜角が47度であり,アウトリガーを張り出さない状態では定格荷重が0(クレーン自体がが安定度を失っている状態)であったにもかかわらず,つり荷が0.11tとつり上げ荷重に対してさほど重くないと判断し,そのまま荷をつり上げて右旋回したためバランスを失ったものである.
アウトリガーについては,作業場所が工場の出入り口に近く工場内通路にあたるため,十分に張り出していなかった.なお,コンピュータ制御の過負荷装置及び過巻防止装置は手動で無効にしたままになっており,警報音が鳴っている状態で作業を続行していた.
|
|